13 あの病院

 今でも思う。

 あの忌まわしい交通事故の際、『あの病院』に担ぎ込まれなかったなら。

 まだ開発段階だった新型のサイバー装備を組み込まれずに済み、結果として身につけてしまった超人的な身体能力を隠すためにひたすら体育系の授業をサボる羽目にもならず、巡り巡って謎の警備隊にスカウトされることもなかっただろう、と。

 そして、今でも思う。

 あの時、『あの病院』に担ぎ込まれなかったなら。

 僕はこうして平穏な大学生活を送ることも出来ず、警備隊司令レミーの無理難題に振り回されることもなく、実にあっけなく天に召されていたのだろうと。


 命は、いつだって運命の女神様の手中にあって。

 僕にとっての女神様は、きっと彼女レミーだった。

 ただ、それだけだ。

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