03 焼き芋

 落葉の季節は、文さんにとって一世一代の大勝負の時期だ。

 庭中の落葉を掃き清めることこそ文さんの使命で、秋から冬にかけては朝から晩まで庭を掃く彼女の姿を見ることが出来る。

 松来家の庭は広く、落葉樹も多い。それを毎日せっせと掃き清めるのだから、集まる葉の量もかなりのものだ。


「というわけで、これを有効活用しない手はないと思うんだよ」

「要するに焼き芋が食べたいだけでしょうが」


 集めた落葉と枯れ枝を庭で燃やし、スーパーで安売りされていたさつまいもをアルミホイルに包んで投入する。

「はは、なんか懐かしいなあ」

 懐かしいといいつつも、実家で焼き芋などしたことがない。焚き火独特の匂いや音が、共通認識としての『郷愁』を誘うのだろうか。

「そろそろ頃合いかな?」

 不慣れな手つきでトングを操り、焚き火の中からさつまいもを探り出す。

 軍手をした手でアルミホイルごと割れば、黄金の輝きが溢れ出した。

「いただきまーす!」


 文さんの『落葉チャレンジ』は、まだ始まったばかり。

 今年はあと何回、焼き芋が楽しめるだろうか。

 ――また来年も、楽しめるだろうか。

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