第3話スキル授与式
「今日ってスキル授与式なの」
「そうだぞ。今日は大事なスキル授与式だ。一生の運命が決まってるといっても過言ではない」
そうそう。ここで俺は神様みたいなやつと会うとか、なんかイベント起きたり、スキルが優秀だったりするってことだな。うー、ワクワクする。
「ねえねえ、お兄ちゃんってば」
あーいけねー。スキルのことがいっぱいで、大事な妹の話聞いてなかった。でも、今の言い方かわいいなー。天使だな。
「ねえ、聞いてるー」
「わりー、聞いてなかった」
「もー、お兄ちゃんはもう頼らない」
「おいおい、それはないだろ」
「じゃあ、ちゃんと聞いて」
「わかったわかった、何でも聞いてみな」
「す、すきるってなに」
「あー、スキルか。スキルは魔素を使って何ができるかを具体的に表したのが、どうとかこうとか。あんま俺のわかんねえ」
「やっぱ頼りない」
「なんだ、やっぱって。前から思ってたのか」
「ふん、知らないもーんだ」
「おい、待てって。たった数か月でお兄ちゃんへの対応がここまで変わるか。全く昔のクレアが恋しいぜ」
「聞こえてるよー」
なんか子ども扱いしたせいなのか、さっきまであったふわふわ感がなくなっている。寂しいぜ、兄ちゃんは。
「前へ出て鑑定石に触りなさい」
「はい」
「スキル 剣熟練が使用できます」
「やったー。ありがとうございました」
「次の人、前へ出なさい」
なんかワクワクするな。楽しみだ。スキルはともかくレベルってなんだ。高い方がいいのか。あ、次はクレア。俺はその次か。
「前へ出て鑑定石に触りなさい」
「はい」
「こ、これは。スキル です」
「おー、すげー」
「聞いたかあれ、紋章魔術熟練:火炎って紋章魔術熟練:火の上位じゃねえか」
そうなのか。クレアがそれなら、転生した俺はもっとすごいんじゃないか。
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「さあ、すげえのひいちゃうぜー」
「前へ出なさい」
「はい」
「鑑定石に触りなさい」
「はい」
何が出るのかな。
その瞬間、俺は意識を失った。転生してきたみたいに。
「うああーー、助けてくれー」
「ま、まだ死にたくない。やってねえんだよ俺は」
「もう無理だ。無理だ無理無理無理無理」
そこら中から悲鳴が聞こえる。生々しい声だ。いったい何なんだこの世界。でもなんか見覚えがある。地球か。だが、地球にあんな生き物はいないはずだ。
ん、なんだあれ。翼が生えているのか、天使なのか。それにあの男、何をやってるんだ。立ちはだかっているのか。あんな強そうなやつにか。馬鹿なのか、犬死するだけだぞ。いや、まて。なんか見覚えがある顔だ。
その男は体中血だらけで、傷がたくさんがついていたがわかった。あの男は間違えなく俺だということが。
「お、俺?俺なのか。いや、俺だ。ここは一体何なんだ。教えてくれ。ま、待って、待ってくれ。ここは言った何か、お前は一体何なんだ教えてくれ。」
「お、お兄ちゃん。起きて、起きてよ」
「な、なんだ、何だったんだ一体」
「な、なんだこのスキル。神之力とは何なんだ」
「神之力。聞いたことあるか」
「いいや、ねえな」
「神之力。俺のスキルなのか」
なんだ、神之力って一体何のスキルだよ。いや、それよりもあの光景だ。あれは何を語っているのか、さっぱりわからない。しかも、あそこにいたのは間違いなく俺だった。いったい何をしてる。
疑問が疑問を呼び、より一層わからなくなる。そんなことを考えているうちに、馬車が来た。そして、その中には神父らしき人がいた。
「し、神父さま、いったいどのようなご用件でしょうか」
さっきの修道士がガタガタ震えている。こいつはとてつもなく偉いのか。周りのやつの表情からして、偉いんだろう。昔だと王様を神だと崇めているところがいたな。なんか、そんな感じに見える。
「お、おい座らんか。神父様がお見えなのだぞ。死にたいのか」
「よせ、我はこやつの妹に用がある。もちろん、こいつにもな」
「は、承知致しました。おい、お前ら下がれ。授与式は中止だ、中止」
修道士がそういうとみんな逃げるように去り、修道士もいなくなった。
「よし、邪魔者はいなくなったな。今からお前らの行動を制限させてもらう」
「な、なんでだ。理由を言え。俺たちにも知る権利がある」
「なんだその口のきき方は、まったくなってないぞ。お前らが知る権利などない。いいな」
今殺されるかと思った。像が砂をけりながら今すぐにでも突進してくるように、ハイエナが生きたまま骨を砕いて食べるように、わにが体を回して腕を引きちぎるように、そんなただ死ぬではなく、残酷に痛めつけながら遊ぶように殺されるかと思った。本能が俺に訴えている。こいつはやばいと。
「これからのお前らの行動は、兄の方は仕事の稼業を手伝う。この国には出るな。そして妹の方は我と一緒に王都で働くだ。これは神のご意向だ」
そしてこの晩、クレアは連れていかれた。俺はそれからしばらくの間引きこもっていた。
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あれから11年が過ぎ、俺は15になった。この世界では立派な大人だ。俺はあの神父に言われたとおりに父の仕事を手伝っている。仕方ない、逆らえばたぶん殺されるだろう。それに、俺の当てにしていたスキルは何の効果も出さなかった。町では友達もいたが今はもう、
「おい、このクズ。無能。聞こえてんのか」
「無能のスキルも無能だったな。わははは」
なんてことしか言わないクズに成り下がってしまった。全くいくら俺の心が広いからってからってこれはないぜ。しかし、なんであの神父は俺を追放しなかったんだ。隔離って何のためだよ。
まあ、そんなことどうでもいいや。なんせ、今日は俺のかわいいかわいい妹が王都から帰ってくるんだ。寂しかったろうに、帰ってきたらなでまくってやる。あ、客が来た。接客しないと。
「いらっしゃいませ。あ、クレア元気にしてたか。心配したんだぞ」
「-----」
「全く黙ってないで何とか言えよ。まさか、お兄ちゃんに見とれたとか」
「-----」
「なんだよ、そこ笑うところだろ」
「-----」
「どうしたんだクレア」
あまりにも反応がないクレアを心配して駆け寄った瞬間。ものすごい速さで突進してくるクレア、そしてクレアは俺の近くでこう言った。
「浄化しろ、悪魔」
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