第4話

「さて、お菓子も食べたし、なにかしようか。あ、天音あまねちゃんは時間大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

けんは・・・大丈夫か」

「聞くまでもないだろ」

「そうだったな」

「天音ちゃんはなにかゲームとかやってたりするかな?」

「ごめんなさい、ゲームはお姉ちゃんがやっているのを見たことがあるだけで、自分がやったことはないです」

「いやいや、謝らなくていいよ。なら、何かあったかな」

「あー、たしかお前、滅茶苦茶ゴールまでが長いすごろく持ってなかったか?」

「いいね、すごろくならプレイヤースキル関係ないし楽しめるね。って天音ちゃんいいかな?」

「はい!すごろくならできます」

大貴たいき、お前もやるか?」

「んー、いいや」

「そか」



「よっしゃ!1着!ほんと、なんでお前が持ってるすごろくってこんなに長いんだか」

「知らねーよ、貰い物なんだから。しかもこれ、いくつかもらったものの中で一番短いやつだから」

「え、もっと長いのあるのかよ」

 すごろく開始から4時間が経ってようやく健がゴールした。僕と天音ちゃんはまだ8割くらいのところにいる。

「健お兄ちゃん、5や6が多くてすごかったです」

「あ、天音ちゃん、俺のことは普通に健でいいぜ。健お兄ちゃんとかって呼ばれるの慣れないし」

「わかりました、健さん」


「僕たちもさくっと終わらそうか。天音ちゃんは帰りの門限とかある?」

「18:30あたりまでに家に帰っていれば問題ないです」

「よし、それならなんとか終わるかもな。健が終わったから、人数が減って回転率も上がったし頑張って終わらそう。ここまで来たら僕も最後までやりたいしね」

「はいっ、頑張りましょう」

 残り2割、普通のすごろくならそんなに時間はかからないだろうが、4時間で8割しか進まなかったからなぁ。単純計算であと1時間。しかもそれは3人での単純計算だから、もう少し早く終わるだろう。3人での計算で残り1時間、60分なら、2人なら40分といったあたりか。それなら余裕で天音ちゃんの門限には間に合うかな。まぁ、サイコロの出た目によって変動するだろうけどね。



「ふぅー、やっと終わった。長かった」

「こんなに長いすごろくをやったのは初めてです」

結局、残り2割のところから50分ほどかかってようやく終わった。5時間もかかるすごろくって・・・。

「さて、もうそろそろ時間的に帰らないといけないっぽいね」

「あ、そうですね。楽しくてあっという間でした」

「健、お前も大丈夫なのか?今日はたしか、なにかのイベントが始まるって言ってなかったか?」

なんのゲーム化は言っていたが忘れた。だって僕はやっていないゲームだからね。

「あっ、やべっ忘れてた。こうしちゃいられない、じゃあな。あ、天音ちゃんもまたね」

「あ、はいっ。さようならっ」


「それじゃ、天音ちゃん、近くまで送っていくよ」

「え、でもそれは迷惑になるんじゃ」

「いいよいいよ、そんな事気にしなくても」

「それじゃあお願いします」



「そういや、家はここの近くなの?」

「んーっと、このまま真っすぐ行っていたら赤い橋がありますよね?その橋を渡って少し行けば家がありますね」

あぁ、あの橋か。ってその橋まで徒歩だとちょっと距離があるな。

「あの、」

「ん?どうした?」

「お姉ちゃんの小さな頃の話、教えてもらえませんか?」

「あぁ、いいよ。と言っても僕も最後に会ったのはかなり昔だし、あんまり覚えていないけどね」


「雪音は怖いもの知らずで、何にでもズカズカ突っ込んでいって、あいつ、ドジだから誰かが一緒じゃないと危なっかしくて・・・意外と覚えてるもんだな」

「やっぱり今とあまり変わらないような気がしますね」

「さっき、雪音を探して隣町まで行ったって言ってたよね?」

「うん」

「あいつ、あれでも成長はしてたよ。昔なんてまだ小学生にもなってないくらいの頃に、あそこに山があるだろ?あそこに行ってみようって連れて行かれたことがあってね」

「・・・・なんとなく何が起きたか予想できますね」

「あぁ、遭難した」

「やっぱり」

「今だったらもし山の中で場所がわからなくなっても、あの程度の山ならどこでも携帯の電波届くだろうし、マップを見ながら帰ってしまえばいいけど、勿論あの頃は携帯なんて持ってもなかったし、そこにいた人は、僕と雪音の2人だけでね、それはもう大変だったよ」

「お姉ちゃんのことだから、道なき道を行こうって言ってそうですね」

「そうそう、舗装されてなかったとしても道として多少整備されているところなら、その道沿いに行けばどうにかなったかもしれないけど、完全に道じゃないところばかり通っていたね」

「本当に今も昔も変わってないんだ・・・・。でもそこからどうやって帰ったのですか?」

「小学生になる前のような頃の身長ってさ、今みたいに多少の隙間から明かりが見えなかったんだよね。でも、道なき道を進んでいって運良く山の展望台として整備されていたところにたどり着いてね。そこからは普通に道をたどって帰っていったよ。勿論周りも真っ暗だからすごい怒られたけどね」

「展望台があってよかったですね」

「そうそう、あの時運良く展望台にたどり着いてなかったらもしかしたら死んでたかもしれないからね」

「聞いているだけでも怖いですね」

「まぁ、僕もその時はなんだかんだ楽しかったし、何とか家には帰れたし、今ではそう悪くない思い出だけどね」

「それにしても、本当に変わってなくてびっくりです」


「逆にさ、最近の雪音がやらかしたトンデモなこと教えてよ」

「えっと、さっき言ったものを除いて、特に驚いたのは、お姉ちゃんが中学2年生の頃、何かの漫画に影響されたのだと思うんですが、家の2階の窓からカーテンをつなげて地面にまで垂らしたものをつたって降りようとして落っこちて骨折したり、何をしたのかはわかりませんが、コンセントのタコ足配線のやつを発火させたりでしょうか」

「あれ?なんかひどくなってないか?特に2つ目は危ないな」

「おれは驚きましたね。急いで鍋に水をくみに行って何とか消火しました。バケツとかでもいいと思ったのですが、あんまり使わないバケツを探すよりは鍋に入れたほうが早いと思いましたしね。あ、これはお姉ちゃんが小学生の時の話ですけどね」

「むしろそんなのでよく生きてるなぁ」

「そうなんですよ、今言ったもの以外にもいくつも危なっかしいことして、何回か死んでもおかしくないと思うような事もあったのでいつもヒヤヒヤしてます。あ、でも最近は本当にマシになりましたけどね」

ま、まぁ流石に。


「おっと、雪音について話していたらもうここまで来たか」

「もうこんなところに。結斗お兄ちゃんとお話していたら楽しくて時間があっという間にすぎていっちゃいますね」

「ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ」

「そうだ、何か連絡先を教えてほしいです」

「いいよ、なんのアカウント持ってる?何も持ってなかったらメールアドレスでも電話番号でもいいけど」

「青い鳥のやつ・・・なんでしたっけ。あれなら持ってます。お姉ちゃんが知らない間に私のアカウント作っちゃってたので」

おいおい・・・

「あぁ持ってるよ、それじゃこれ僕のアカウントだから、検索してみて」

「あ、はい。えーっと・・・あ、ありました」

「お、フォロー通知が来た。これであってるね?」

「はい。改めてよろしくおねがいします。結斗お兄ちゃん」

あぁ、やっぱお兄ちゃん呼びは嬉しい。っと今はそんな事思ってる場合じゃない。

「あぁ、こちらこそよろしくな」

「あ、この橋を渡ったらすぐですのでここまでで大丈夫です」

「おっけー、またね」

「はいっ」

うっ、その笑顔は反則だろ。かわいすぎる。



ピコン


ん?通知か。天音ちゃんかな。・・・誰だこのアカウント。

『おやおや~初日で幼馴染の妹のアカウントの情報を手に入れてに手を出すなんて~~』

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