第3話

「こ、ここが結斗ゆいとお兄ちゃんの家······」

「どうしたの?入っていいよ」

「あっ、はいっ!」

「あっ、兄ちゃんお帰り」

「よっ大貴たいき。今日は土産があるぞ」

「なになに?」

大貴は僕の弟だ。いつも家でゲームをしている。どうやら友達とオンラインプレイを楽しんでいるのだそう。そして、けんが家に来たときは一緒にゲームしているので、大貴と健も仲がいい。

「まぁ、俺からじゃなくて、この天音あまねちゃんがくれた物だけどな」

「大貴、ジュース持ってきてくれ」

「えー」

「後でMBLを手伝ってやるよ」

「わかった」

MBLは3Dの広大な世界を自分が好きなように冒険したり建築したりできるゲームだ。明確なゲームクリアというものは無く、その自由度からか、世界的に大人気のゲームだ。ただ、建築や冒険に必要な資材とかを集めるのも自力で全部やらないといけないから、よく手伝っている。僕は、建築力なんてないからいつも道を作ったり素材集めをしたりしている。

「兄ちゃん、どこにあるのー?」

あ、そか、この前動かしたんだった。

「いいや、自分でやるよ」

「やった」

おい。


「えっと、私は何か手伝いましょうか?」

「あぁ、そこに座っていてもらっていいよ」

「結斗、まだかー」

「まってろって」


「ちなみに雪音ゆきねは何をくれたんだろう」

「クッキーです」

「なるほど、なら僕は牛乳を用意しようかな。他に牛乳がほしいひとはいる?」

「じゃ、じゃあください」

「天音ちゃんね、他は?」

「兄ちゃん、オレンジジュースがいい」

「はいよ、健は?」

「俺もオレンジジュースでー」

「へーい」

 僕と天音ちゃんは牛乳で、大貴と健はオレンジジュースね。


「おまたせ」

「よし、じゃあ食べようぜ」

 一番接点のない健が一番欲しがるなぁ。まぁいいけど。

「おぉ、おいしい」

「にしても雪音なら手作りのトンデモ料理持ってきそうな奴なのに、流石に成長したかな」

「えっ、なんで知ってるんですか?」

マジかよ。

「ち、ちなみにこれになる前はどんなやつだったの?」

「試食しましたが、思い出したくないです······」

えぇぇぇ。

「その雪音ちゃんって子は料理はできないってことか」

「大体のことはノリと勢いでやっちゃうような奴だからなぁ」

「そうなんですよ。この前も寄り道して迷子になったから迎えに来てと言われた時に探すのが大変でした。寄り道して2つ隣の町にまで行くとは思いもしませんでしたし」

 多分本人は考えなしにふらついてそんな遠くにまで行ったんだろうなぁ。


「そういや、雪音は高校が神野高校って言ってたっけ」

「ならその雪音ちゃんって子に会えるな。俺らも神野高校だし」

「だな。あいつ、どんな風に成長してるんだか」

「私も10歳のお姉ちゃんからの記憶しかないのでアルバムにあった写真の知識しかありませんが、そのまま大きくなった感じです」

ほー。

「こりゃ始業式が楽しみだな」

「俺も面識ないけどどんなトンデモな子か気になるわ」

ははは。果たして雪音は健の予想を上回るのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る