第4.5話 なにかのはじまり

 柔らかな陽の射す草原を疾駆する白銀がいた。

 なだらかな曲面を持ちながら、鋭い影を残し銀馬は揺れることなく野原を駆けていく。


 背に誰の姿もなく、誰に駆られる訳でもなく疾走する。

 その風の如き残像は、誰が見る事もなく、奥へ、奥へと消えていった。


 遮るもののない平原に、はてさて奥という言葉は正しいものか。しかし銀馬は確かに奥へと消えていったのだ。

 誰が見るでもなく、どこを起点にしたのかも分からない奥へと


 宙の彼方では、青いひさしが明滅するように二条の軌跡を辿っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る