好きになることを怖がるな

ねむりねずみ@まひろ

30分程度の6人声劇台本です。 ♂3:♀2:不問1


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■キャラクターの性別は、絶対ではありませんが、世界観を壊すような無理な変更はやめてください


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『キャラクター』

隼(はやぶさ)♂: 妖狐の末っ子 自分たちを迫害する人間と仲良くしたくて悩んでいる 感情的になると力の制御が出来ず、言葉使いがかわる


御影(みかげ)♀: 隼の姉 罠にかかり病気になってしまった 妖弧 だれよりも優しい


夜凪(やなぎ)♂: 隼の兄 一番年上 御影の看病をしながら 隼を育てている できるならこのまま3人で平穏に暮らせたらと考えている妖弧


少女 ♀: 村の少女 森に迷い込んだところを隼に助けてもらう


父親 ♂:少女の父親 妖怪を嫌っている


ナレーション 不問: ナレーション



『コピペ用キャスト表』


「好きになることを怖がるな」

隼 ♂:

御影 ♀:

夜凪 ♂:

少女 ♀:

父親・村人 ♂:

ナレーション ♂♀:


以下台本

_____________



ナレ「 寂れた村の近くに、妖が出ると言われる森があった

昼間でも薄暗いその森の奥で、泣いている少女がいた

そこに、薄汚れた着物を着た 1人の少年が通りかかる」


少女 「ひっく…お父さんー、どこー?」


隼M 「こっちから声がする。あっ、人の子だ。転んだのかな?血が出てる」


少女 「痛いよー、痛いよぉ」


隼M 「怪我…してる、大変だ」


ナレ「 警戒しながら遠巻きに見ていた少年だったが

   少女が怪我をしていることに気づき、飛び出していった」


隼 「だっ、大丈夫?」


少女 「…ひっ…お兄ちゃんだぁれ」


隼 「ぼ、僕はこの森に住んでいるんだ、君はどうしてここに?」


少女 「森の入口で遊んでたの…そしたら蝶々がいて…追いかけてたら、転んじゃったの…」


隼 「そうか、森に迷い込んじゃったのか」


少女 「お父さんー、お父さんー」


隼 「(きっと、この子の家族も心配してるよね…)そうだ、僕が村まで送ってあげる」


少女 「本当?」


隼 「うん、その前に足を…っと。これで大丈夫。どう、歩けそう?」


ナレ  「少年は自分の着物の裾を破り、その切れ端を少女の足に巻いてやった」


少女 「わあ、痛くない!お兄ちゃんありがとう」


隼 「うん、それじゃ行こうか」


少女 「うん、あ、お兄ちゃんの名前は?」


隼 「僕? 僕は…隼」


少女 「隼お兄ちゃん!…私、遥!…お兄ちゃん…私、お父さんに早く会いたい」


隼 「大丈夫、ちゃんと村まで案内するから…そう言えば、遥ちゃんのお母さんは?」


少女 「お母さんは、私が赤ちゃんの時に死んじゃったんだって、お父さんが言ってた」


隼 「そっか、ごめんね悲しいこと思い出させて」


少女 「ううん、お父さんがずっと一緒にいてくれるから平気」


隼 「いいな、僕の両親はもういないから、遥ちゃんが、ちょっと羨ましいな」


少女 「隼お兄ちゃんお家に一人なの?」


隼 「ううん、兄様と姉様がいる。強くて頭の良い兄様、綺麗で優しい姉様。僕の大好きな家族だよ」


少女 「一緒だね、わたしもお父さんの事、大好き!」


隼 「うん、一緒だ。さあ、この道をまっすぐ進めば…あれ?誰かいる」


少女 「あっ、お父さん!!」


ナレ 「森の出口へたどり着くと、一人の男性が居た。

   男性の顔はとても憔悴しており、しきりに誰かの名前を叫んでいた」


父親 「あぁ、遥!よかった。一体どこに行っていたんだ?!どれだけ心配したと…」


少女 「ごめんなさい、でもお兄ちゃんが連れてきてくれたんだよ、足の怪我だって…」


父親「お兄ちゃん?…なっ、あっ妖!?」


隼 「あっ、あの…」


父親 「寄るな、気持ちの悪い化物め。うちの子を、どうしようって言うんだ!!」


隼 「え、僕、そんなつもりは…」


父親 「黙れ!!お前等、妖の言う事なんて信用できるか。出て行け、今すぐここから出て行け!!」


ナレ 「隼の話に耳を貸さず 辺りの石や枝を投げつける父親

耐え切れず、隼は森へと帰っていった

その背中を睨みながら、父親は少女に向かって言った」


少女 「お、お父さん?」


父親 「いいか、今後あんな化物と 話しをしたらいけないよ、いいね?」


少女 「でも…」


父親 「でもじゃない、遥、お前には黙っていたが…お前の母さんは昔妖に食われたんだ…」


少女 「えっ…お母さんが…」


父親 「だから、妖は絶対に信用してはいけないよ…絶対だ。わかったね」


少女「……。」


ナレ「 森の奥深く 先ほどの一件がショックだったのか、隼の足取りは重い

そうこうしているうちに、隼達の住む屋敷へとたどり着いた

屋敷と呼ぶには、少しばかりぼろいが 中では、姉の御影、兄の夜凪が待っていた」


隼 「…ただいま」


夜凪 「おかえり、隼」


御影 「おかえり……沈んだ顔して、どないしたん?」


隼 「兄さま…姉さま、何で人間は僕達の事を嫌うの?」


御影 「…そうさね、何でやろね?」


隼 「あいつ等、僕が村に近寄っただけで 化け物って言ったんだ」


御影 「そう…」


隼 「キモチワルイ化け物 あっちへいけって…」


夜凪 「そうか……」


隼 「目が合うだけで酷い言葉いわれたり…石を投げられたり…僕達はただ、静かに暮らしてるだけなのになんで」


夜凪 「俺達妖の中には、人間を食らう奴らもおる…向こうが一方的に悪い訳やないんや」


隼  「…人間なんて 大嫌いだ… 」


御影 「隼…そんなん言うたらあかん!」


ナレ 「病で酷使した体を起こしながら御影は言う

    その表情はとても悲しそうだった」


夜凪 「御影…。たしかに、隼の言う事もわかる。俺もできる事なら静かに暮らしたいし、御影の病やて元はと言えば、人間の仕掛けた罠が原因や」


御影 「夜凪…」


夜凪 「でも、それでも人間の中にも良い奴はおる。共に生活していけば、いつかきっと分かり合える日がくるさ…」


隼 「そんなの、わからないじゃないか!!さっきだって森で迷っていた子を村に連れて行ったら、化物呼ばわりされて…ここから…出て行けって!!」


夜凪 「隼…」


隼 「やっぱり、人間なんて嫌なやつばかりだ…あんな奴ら死んじゃえばいい!!」


御影 「隼…そんなん言うたら…うっ…うぅ」


ナレ「 左胸を押さえ 布団にうずくまる御影。みるみる顔色が悪くなり、呼吸をするのも辛そうだ」


隼 「姉様?!姉様っ!!」


夜凪 「御影? はっ、発作や…隼、薬を!!」


御影 「ゴホッ!!うっぅ・・・」


隼 「薬…姉さま待ってて、今薬を…あれ…ない…ない!!」


御影 「くっ…うぁああ!!」


隼 「姉様!!」


夜凪 「御影しっかりしいや!!」


隼 「どうしよう、姉様が…姉様が」


夜凪 「この間の嵐で薬の補充が出来へんかったからや…くそっ」


隼 「そんな…どうしたら」


夜凪 「一番近いのは…あの村や。でも、さっきの事があるから…やめたほうが…」 


隼 「 僕、薬貰ってくるっ!!」


夜凪 「…っ、隼!待つんや!」


隼M 「薬…薬。どうしよう…どうしよう…姉様…」


ナレ 「隼は薬を求め森を駆け抜ける、そして数刻と経たずに、先ほどの村へとたどり着いた」


村人「また来たのか、あっちへいけ!この化け物!!」


隼 「お願いだよ、姉様が発作で…誰か薬を…」


村人「化け物なんざに売る薬はないっ!帰っとくれ!」


隼 「お願いだから、じゃないと姉様が…」



ナレ「 隼が顔を上げた時、頭部に鋭い痛みが走る

  村人が投げた石が、額に命中したのだった」


隼 「ぐうっ…」


村人 「消えろ化け物めっ!お前の姉なんざ知った事じゃない!!」


隼   「誰か…誰か…あっ…」


村人 「おい!!もっと石を投げろ!!」


隼  「ぐっぁ…お願いだ、姉様に…薬を…」


村人 「あっちへいけっ!!二度と村にくるなっ、この化け物がっ!!」


隼 「くっ…」


ナレ「 隼は、走り出した。しかし村の出口まで来ると 隼の足は止まった

先ほど助けた少女が泣きそうな顔でこちらを見ていたのだ」


少女 「お兄ちゃん」


隼 「…あ」


少女 「だいじょうぶ?」


隼 「……だめだよ、来たらだめ」


少女 「でも…」


隼 「こっちに来たらまたお父さんに怒られちゃうよ」


少女 「でもお兄ちゃん怪我してるよ」


隼 「こんなの、なんでもないよ…なんでも。もう行かなきゃ」


少女 「まって!」


ナレ  「冷たい態度をとり 出ていこうとする隼の腕を

    少女は全身で掴み 引き止める

  涙でぐしゃぐしゃになりながらも、必死に腕を掴んでいた」


隼 「なっ…」


少女 「こっこれ、お父さんがお兄ちゃんにって…」


隼 「これは…」


少女 「楽になるお薬だって…言ってたから」


隼 「薬…本当に?…これで姉様は…」


少女 「お兄ちゃん?」


隼 「ありがとう…ありがとう…ありがとう!」


少女 「く、苦しいよお兄ちゃん」


隼 「ごっごめん。僕、戻らなきゃ!」


少女 「あ、お兄ちゃん またね!」


隼 「うん!!」


父親 「…薬、渡したのか?」


少女 「うん、お兄ちゃん ありがとうって言ってたよ!」


父親「そうか…なら早く家に入りなさい」


少女「お父さん、ありがとう!」


父親 「・・・。」


ナレ  「隼は屋敷へと急いだ その背中を少女の父親が見つめていた

その視線に気づかず ただただ走り続けた」


隼 「(薬が貰えた、これできっと姉様の病気もよくなる)」


ナレ 「小枝で足を切ろうが、泥に足を取られようが隼は走った

   息を切らしながら 懸命に…屋敷へと真っすぐに走り続けた

   しかしその表情は、喜びに満ち溢れていた…」


隼 「はぁはぁ…ただいま!!」


夜凪 「隼…お前どこ行ってたんや」


隼 「……ごめんなさい兄様、姉様。でも、でも薬がもらえたんだ!」


御影 「ごほっ…そう」


夜凪 「本当か?!」


隼 「うん!これで、これで姉様助かるよね?」


夜凪 「あぁ、隼 早く飲ませてやり」


隼 「うん!姉様、これ飲んで早く元気になって!!」


夜凪M「ん?この匂い…」


ナレ 「薬を受け取ると、何故か一瞬 御影の手が止まった…」


御影 「隼、ありがとうな……んっ」


夜凪 「はっ!!待つんや御影、飲むな!!それは…」


ナレ 「夜凪が言い終わる前に 御影はニコリと笑い 薬を飲みほした」


夜凪 「御影っ!!」


隼 「…具合はどう、姉様?」


御影 「…くっ、うん、すっかり良くなったわ」


隼 「本当?良かった…姉様、良かった…」


夜凪 「御影…みか…」


御影 「夜凪…」


ナレ「 何も言うなという御影の目に 夜凪は言葉をなくす」


隼 「人間にも良い奴がいるって本当だったんだね」


御影 「せやね、人間にもえぇ人は…お…る…」


ナレ  「笑顔だった御影の顔色が 段々と陰り始める」


隼 「姉様?どうしたの?」


御影 「何でもあらへんよ…だい…じょう…」


ナレ 「力なく床へと倒れ込む御影

夜凪は倒れ行く御影を抱きとめた」


隼 「姉様?!どうしたの?…なんで、薬飲んだのに?」


夜凪 「隼、さっきお前が御影に渡したんは…薬やない…」


隼 「…え?」


夜凪 「さっきお前が渡したんは…毒や…」


隼 「え?…だって、楽になる薬だって」


夜凪 「お前、人間に騙されたんや」


隼 「嘘だ…だって姉様良くなったって…嘘だよね、姉様…冗談だよ…ね」


夜凪 「隼!!」


御影 「夜凪、もうえぇ、もうえぇよ」


ナレ 「夜凪に支えられたまま、御影は隼の頬に手を伸ばした」


夜凪 「御影…」


隼 「姉様が飲んだの薬じゃなかったの?…毒って…僕…」


御影 「えぇんよ、こうなるのも運命や」


隼 「そんな…僕のせいで…」


御影 「それはちがうで、誰のせいでもない」


隼 「…あんな奴ら…やっぱり信用したらいけなかったんだ」


御影 「隼…人を嫌いになったらあかんよ?人間にだって えぇ人は おる…」


隼 「嘘や!!そんなん嘘や!!現に姉様は…姉様が…僕のせいで…」


御影 「嘘やない…嘘やないで?」


隼 「でも…あいつら許せへん!!」


御影 「隼…人を好きになる事を拒まんといてな」


ナレ 「細くて白い指が隼の頬を撫でる 隼の大好きな暖かさだ」


夜凪 「御影…お前全部気づいてて飲んだな…」


御影 「そんなこと、あらへんよ」


夜凪 「じゃぁ何故あの時笑ったんや!!」


御影 「嬉しかったんよ…隼の気持ちが」


夜凪 「けど、これじゃ…蓮司(れんじ)さんとの約束が…」


ナレ 「蓮司…その名を聞き、御影の表情は暗くなる」


御影 「…せやね、約束守れへんかった…夜凪には迷惑かけっぱなしや…」


夜凪 「迷惑なもんか…迷惑なんかやない!」


御影 「そか…ほんなら、良かった…ぐっ…」


夜凪 「御影っ!!」


隼  「姉様っ!!」


御影 「夜凪…隼の事たのんだぇ…」


夜凪 「……あぁ」


御影 「隼… 」


隼 「姉様…」


御影 「かんにんな……」


隼 「姉様?…姉様…姉さまぁあああ!!」


ナレ 「火が付いたように泣き叫ぶ隼 御影の亡骸を抱きしめながら 夜凪は静かに涙した

  ひとしきり泣いた後だろうか、隼がゆっくりと起き上り 何かをつぶやいている」


隼 「あいつら…絶対にゆるさへん…。許したらあかんのや…そうや…あんな村なくなればえぇんや…姉様を奪った奴らは…皆…」


夜凪 「まて、隼!人を好きになる事を拒むなという、御影の言葉を忘れたんか?!」


隼 「そんなん知らん…姉様はもうおらんのや…あいつらのせいで…あぁ、せや。今から潰しいこ…くくく…あっはははは!!」


夜凪 「…止まれ…此処は通さん」


隼 「煩いな…止めても無駄やで?怪我しとうなかったら、はよいね」


夜凪 「ならば、力づくでも止める」


隼 「あははははは!! とめてみぃ。ほな、こちらから行くでっ!!狐火」


夜凪 「くっ。行け、管狐!!」


ナレ「 隼が唱え終わると 炎が巻上がり 夜凪に襲いかかる

負けじと夜凪も 自分と御影の骸を守りながら応戦する…が、その強大な力に押し負けてしまう」


夜凪 「ぐぅっ…隼、目を…覚ませ」


隼 「はっ ぬるい、ぬるすぎるで…兄様…なんやこんな弱かったんか?」


夜凪「っ隼!!ええ加減にせい!こんな事、御影が望んでるとでも思うんか?!」


隼 「御影…御影煩いなぁ…姉様を殺した奴らを潰すんよ?喜ぶに決まっとるやろ!!!」


夜凪「それはちゃう!!御影は…人間が…好きなんや…隼…目を…覚ませっ!!!」


隼 「人間なんて…全部いなくなればええんや…いてまえ鬼火!!」


夜凪「なっ…隼っ…ぐぁぁぁあぁあああ!!!」


ナレ 「先ほどの焔とは比べ物にならない力が 夜凪と御影に襲いかかる

   避けるまもなく焔に包まれる2人」


夜凪 「ぐぁっ… 御影 ……隼 」


ナレ 「隼の放った焔が 全てを燃やす

3人で暮らした屋敷が 音を立てて崩れていく」


隼 「くくく・・・・あっははは!!あはは…はは・・・ははは…うっ…うぅ…うあぁぁぁぁ!!」


ナレ「 嬉しいのか、楽しいのか、その妖怪は笑っていた

だがその笑い声は徐々に泣き声へ、悲痛な声へと変わっていった」


隼 「…様…かんにんな…」


ナレ 「誰に対しての懺悔なのか…消え去りそうな声でそう告げると 立ち上がり

   おぼつかない足取りで 燃え盛る屋敷を後にした

独りになったその妖怪はこれから、どこへ向かうのだろうか

  その妖怪が放った言葉は 誰に届くわけもでなく 中を舞い虚空へと消えていった」



おわり

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好きになることを怖がるな ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta

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