ちょうかつになるな!その5
趙の国を死守していた老将廉頗にかわり、若きホープ趙括が前線の総司令官となりました。
彼が戦場について初めに行ったことは廉頗にしたがった将たちを更迭することでした。
当然のことですが、今までの戦場での経験などがこの処置でなくなり情報という面で不利になります。
さらに防御陣形を解き、攻撃陣系に全面的に陣地替えをします。
このこと自体は戦術を攻勢に変えるという方針なのですから咎めるのはどうかと思います。
ただ、それがどういう経緯で敗北につながったかについて、注目してみて下さい。
こうして、攻撃態勢を整えた趙括は敵国秦に対して攻勢ではなく「大攻勢」を仕掛けました。
さて、一方秦の動きですが、まず総大将を王齕から歴戦の勇将である白起将軍に変えます。
王齕将軍も優秀な将軍でしたが、白起将軍は中国戦国時代でも随一の名将、猛将でした。
そして、白起将軍はわざと自軍の陣地に隙を作り、趙括を誘い出します。
そして趙括は初陣を見事勝利で飾ります。
その時趙括はどう思っていたでしょうか。
恐らく「それ見たことか、老いぼれの廉頗だから動きが鈍くて勝てなかったのだ!私のような若く優秀な将軍だから勝てたのだ!!」とか「秦の軍勢など弱いことこの上ない、恐れるに足らずよ!」と豪語したかもしれません。
一方の秦の白起将軍は「経験のないこわっぱめ!今のうちにいい思いをさせてやる!最後はどうかるかも知らずに愚かな事だ!」などと考えていたことでしょう。
調子に乗った趙括はどんどん勝利を重ね、戦線を拡大していきました。
士気は高かったと思われますが、戦線は伸びきり、攻撃はともかく防御には極めて脆い陣営が延々と連ねていたに違いありません。
そして、それこそが白起が戦う前から考えていた戦術だったとしたら・・・
もちろんこの時趙括の頭にそんな考えが浮かぶはずもなく、恐らく若く経験の乏しい若い将校たちもまったくノーマークだったでしょう。
つまり、趙括が慎重な将校を更迭し、自分の未熟な仲間、イエスマンだけの幕僚だけにして獲物にかかる獣のようにお膳立てしたのも全て秦の戦略でした。
そしてついに機は熟します。
次回にご期待ください。
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