ちょうかつになるな!(中国ことわざあれこれ)その3

さて、視点を趙の国と敵対している秦の国に移して見てみましょう。

秦は強力な軍事大国であり、野心を持って趙の国、そして中国全土の統一を目指していました。


趙は依然も述べた通り軍事大国でした。

その点は秦と似ていますが、この時期の国力を見ると秦の方が強かったようです。

なので、決戦を挑んでもらった方が戦いは有利であると見ていて短期決戦が出来ることを望んでいました。


それゆえ、趙の老将廉頗(れんぱ)が守備重視の持久戦を取ったことがとても都合が悪かったのです。

そこで、廉頗を外すことが勝利への近道であり、かつ軍事的に外すことが難しいと判断した秦の上層部が趙の弱点として見つけたのが趙括(ちょうかつ)でした。


まず秦が趙の国に流した情報はこうです。

廉頗は年寄りで動きも遅く、本来なら勝てる戦に四苦八苦している。

趙の国民の生活が悪いのもこの戦術のために軍事費を多く費やしているからだ。

けしからん!


という感じです。

初めに述べたように敵国秦から見ればやって欲しくないことを行い、戦力的に劣勢であるにもかかわらず、耐え抜いているというのは冷静にみれば上出来な事です。


しかし、秦が趙の国民に流した情報も部分的には真実なので趙の国民の多くはその言葉に心が動かされました。

そして、当然その声は当時の趙という国の政府に当たる朝廷と王のもとにも届きます。


なにしろ、国民の声とお金の問題です。

的確といえば的確な問題提議でした。


そして秦の間者たち、今でいうメディアの連中はその後、趙括という若い将軍の名前を好意的な情報と一緒に流していきます。


さて、趙括とはどんな人間か?

彼は自尊心と虚栄心のとても強い人物で、弁舌が巧みでした。

彼は名将である父に対しても議論を吹っ掛け、自分が優秀であることを周りに見せつけていきます。


また、名将である父親は部下を大事にして、褒美をもらえば部下に惜しみなく分け与えるのに対して、息子の趙括は手柄は全部自分の物としてがめてしまい、部下に対しては威張り散らすという有様でした。


兵書による議論も弁舌は巧みだが、中身の乏しい机上の空論のような物でとても実戦では使い物にならないと母や藺相如(りんしょうじょ)という賢臣にまで猛批判される人物でした。


そんな人物でしたが、うわさ、(メディアか?)の声は大きく決定権を持つ王は趙括を大抜擢する決心を固めました。(次回に続く)

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