変人たちの最激戦区その7
デンゲル人テレスの父親はデンゲル国の国会議員でした。
元々外交畑の人間でデンゲル内部よりも海外の知識を多く持つ。いわゆる「開明派」でした。
彼は海外で多くの知識を得るうちにデンゲルの閉鎖的で独善的な態度に少なからぬ懸念を持っていました。
しかし、彼自身はデンゲルに強い愛国心を抱き、自分は外交でデンゲルのために尽くすのが本分だと考え、外国との難しい交渉を続けていました。
彼の外国から見た評価は「デンゲルのために尽くす頑固者」でした。
デンゲルを小国と見下し、おざなりな要求をする外国の要人たちに対して決して引かず、媚びない外交を心掛けていました。
その一方で国際的に見て公正と思える提案や条約については余計なわがままを言わず、すぐに実務的な話を行い、細部に至るまできちんと確認してから交渉を締結する手堅い手腕も見せていました。
「頑固者」と評価した海外の要人たちも彼の能力は高く評価していました。
ある時、彼の心証を良くしようとパーティーを開いたり、いわゆる賄賂や色仕掛けをした要人がいましたが、彼は型通りの礼をつくしたあとは、そうした汚点を残さないように慎重に行動し、気が付くと消えていました。
そうした人物だったので、交渉相手としては手ごわく苦手と評価する海外の要人たちも、プライベートでは信用に、その人間性の重きを置いていました。
こうして、順調に国のために仕事をしていた彼でしたが、大きな転機が訪れました。
デンゲルの本国で政変が起きました。
彼を重用していた宰相が突如逮捕、暗殺されてしまいました。
彼の外交官としての地位はいわば当時の政権が担保したものでした。
突然の政変は彼を無理やり国際社会からデンゲル国内の政争に引き戻してしまったのです。
当時、若き社会人として父と共に外国にいたテレスもこの争いの中、やむを得ず一時デンゲル本国に引き返すことになりました。
国内の状況に危険を感じ、それゆえに外国に出て、デンゲルのために働くという彼のプランは崩れてしまいました。
そして、国会議員としての彼はこれからデンゲル国内で波乱を含んだ未来へ向かおうとしていました。
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