猟犬を生かしてうさぎも残る その16
会議室内では弱気、消極派の外務官僚グループとその他多数を占める血気盛んな官僚グループとの間で方針を巡る舌戦が繰り広げられていました。
この手のナショナリズムが絡む問題で若者たちが議論すると、どうしても勇猛な意見が強くなり、弱い意見が退けられるのが歴史のあるあるでした。
もし、戦争になれば真っ先に矢面に出ることになる防衛官僚は比較的冷静な意見も述べていましたが、立場上外務官僚の弱腰に見える意見に同調するわけにもいかず、結論は積極派に味方する内容になりました。
これも仕方ないあるあるな現象ですが、問題に調節関係ない部署ほど、勇ましい積極論がどんどん出てきます。
これは簡単な理屈で、責任がない所について、人は積極的な意見を述べやすく、自分が関わる話になると慎重になるからでした。
なにぶんこのまま時間が経てばガチスの計画通り戦争になる可能性が高いとなれば責任がないことが無責任とも言えず、それも一面の事実かもしれませんでした。
さらに時間が経ち、今度は外務官僚が忍耐の限界に達し、「それでは代案を出してみろ!」と逆切れしました。
今度は多数派の血気盛んな若き官僚たちが黙ってしまいました。
元々、官僚というのは命じられたことをきちんと計画を立ててこなすのは得意ですが、自分からアイデアを出すとか新しい何かを生み出すのは苦手でした。
さらに言えば、相手を論破するのは得意でもその後のことについては今までのしきたり通りというのが最適解でしたのでこのような場合は苦手な面々でした。
このタイミングでヒキコモリーヌとテレスがそれぞれ、「結論を出すのは早い」
「少し時間をおいて今後のことを考えよう」と外務官僚に助け船を出しました。
さらに二人ともそれぞれの官僚たちが必死になって集めた情報について美辞麗句を尽くして褒めたたえた後、その中でも外務官僚の情報の大切さを改めて想起させるような言葉を繰り出しました。
そして、ヒキコモリーヌがガチスと正面切って戦うことは実際の戦争であれ、情報せいであれとても大変なことであり、何か今はない対策を立てることが大事である、と協調して会議は終了しました。
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