猟犬を生かしてうさぎも残る その15
SNSでの活躍によりガチスの侵攻を半年遅らせた。
これは外務官僚の報告が正しければ間違いなさそうでした。
近代国家において戦争を行うこと自体が敗北に近い意味を持ちます。
なんとしても防がなければならない。
それにガチスは近年軍事力を増強すべく予算を大幅に拡大し、辺境地域に派兵しては実戦を伴う兵の訓練を行い、来るべき決戦への意識の向上もぬかりありません。
防衛関連の者たちを除き、会議室のコンセンサスは戦争を避ける、その一点に集中しました。
しかし、そうなるとガチスと和平を行うということになります。
それは無理であるというのは外務官僚の報告から明らかでした。
それでもこの若き外務官僚は戦争を避けるべく出来る努力はすべきだし、多少の譲歩も必要との認識を示しました。
しかし、この意見には他の官僚たちの反対が多く出ました。
まず、ある若き防衛官僚が「外務の仕事に大いに期待したいがだまし討ちなどされても困る、ただでさえ戦力差があるのに初戦で敗退などしたら到底ガチスから国を守ることは出来ない」
そう答えて、安易な譲歩の危険性について指摘しました。
他の官僚たちも口々にガチスを信用することの危険性を指摘しました。
このあたりの意見はSNSの世論に影響されたもので、若い彼らならではの意見でした。
もし、彼らの上司たちがこの場にいたら、目をパチクリさせるか、怒り出すかもしれない感じで、情報の格差と世代の格差がもろに出たという感じでした。
冷静に状況を見ていたヒキコモリーヌとテレスたちは少し違和感を覚えていました。
確かに外務官僚の意見はガチスに対しての認識が甘い外務省らしい意見であり、素直に聞くわけにはいかない内容と言うのは分かります。
でも、ガチスに対して最も重要な情報を提供したのは他でもない外務省でした。
そのいきさつがヘタレだろうが自己保身だろうが日和主義だろうが彼らのもたらした情報は素晴らしく今後も重要であることは明らかでした。
それをここで他のメンバーたちが寄ってたかって糾弾してしまっては今後の情報収集に差し支える可能性がある。
彼女たちはそう考えながら、議論の成り行きと発言のタイミングを見計らっていました。
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