狡兎死して走狗烹らる その7

ヒキコモリーヌが最初に発した言葉、それは「何かがおかしい」 でした。

彼女が今の時点で知りえた情報によると、メディア内部ではこのインフルエンサーについてある種のかん口令がひかれている、という情報が入りました。


要点としてはとにかくこのインフルエンサーに関する事故は型通りの報道のみとし、余計な詮索をしない方針で報道しろと上層部の方から圧力がかかっている。

これが最大の方針として通達されたそうです。


それに対して、メディア側の報道やなんちゃって報道バラエティーなどは困惑し混乱しました。


何故なら、いつもの上からのお達しだとこの障碍者インフルエンサーについて話題がある場合は常にポジティブに知名度と好感度を上げるよう報道するように指導がありました。


そして、それが日常化していたので、言われなくても現場の報道は忖度して過剰なまでにポジティブ報道を繰り返してきました。


それが、世論の反発による影響で一時的に報道の自粛の通達があったとはいえ、人のうわさも75日、とあるようにまた元に戻るものと考えていました。


何より長年の付き合いで仲間意識が芽生えていました。

メディアと障碍者インフルエンサーは互いを上級国民の仲間と意識していて、いわゆる庶民に対して指導的な役割を担うという傲慢な意識を共有していました。


事実、事故の第一報が入った時、即効で大がかりな追悼番組と感情丸出しのお涙頂戴、仇討ち上等の番組を用意して彼らに反発した世論に反撃の報道をすると息巻いた

者達も少なからずいたのです。


それが、かなり早い段階、しかもまるで事故が起きるのを知っていたかのように上層部が早めに強いメッセージで自粛を通達したことに大きな戸惑いを感じたという次第でした。


ヒキコモリーヌ自身も今までのメディアの状態は仲間からの情報で把握していましたが、まだ全容は全くつかめていないことに戸惑いと不安を感じていました。


この異常事態に困惑する6人組とヒキコモリーヌ、情報の不足と沢山の人が死んだという恐怖感を抱えた彼らに次の情報がもたらされます。


それはデンゲル人テレスからの情報と彼らの見解でした。

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