狡兎死して走狗烹らる その5

走狗烹らるはよいが、狡兎はいない、だからこの諺をこの事件で使うのはおかしい。

確かにそれは正論でした。


しかし、世の中には正確ではなくても既成事実が独り歩きをして、気が付くと正しいことにされていた、という歴史は沢山ありました。


その説明は後に話しましょう。

SNSでもめていたのはそこよりもむしろ陰謀論が正しく、走狗が烹られたとして烹られたのは誰か、という点でした。


3つの可能性が考えられました。

ひとつはひだまりの国です。

ただ、これは奇をてらったある意味変わり者の考えで少数派でした。


次はデンゲル人でした。

これはひだまりの国よりは可能性が高いという評判でした。

もともとデンゲルとインフルエンサーたちのつながりは強く彼らの普段の生活を良く知っていて、しかも用済みとなれば彼らが得をするのは明らかでした。


最後にガチス統合国です。

予想された人気の中では一番でした。

デンゲルと同じ立場、考えであることが大きな理由でした。


それに加えて、過去に自分たちの思い通りにならない他国の要人や正体がバレたスパイを裏工作で葬った事例があまりにも多かったためその残虐性と行動力はデンゲルよりはるかに上だったことが決め手のような論調でした。


これを裏付けるかのように、この事故に関してメディアは冷静で必要な事実しか報道せず、あまり触れたくない空気すら漂っていました。


生前、特にガチスとデンゲルがあからさまな支援をしていた時期にあれだけ多くのメディアに出演していたインフルエンサーなのにまるで別れた恋人のように冷たくよそよそしい扱いでした。


これは、ガチスあるいはデンゲルがこの事故の真の黒幕であるという根強い根拠となりました。


そのころ、ガチス情報部はこの話題の鎮静化をひだまりの配下のメディアなどに指示していました。


またデンゲル系のメディアもその様子を見てそれに倣いました。

何かしら空気を読んだようです。

そしてデンゲル情報部の方はこの点に関して事故の核心に触れる情報を入手できず、ある種悶々とした空気の中、情報を集めていました。


さて、メディアもSNSも一般人もそして各国の情報部も混乱する中6人組と周りの人々はどのように感じ、何を考え、何を話し合い、何をしたか、次のお話で説明していきます。

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