狡兎死して走狗烹らる(読み)こうとししてそうくにらる

その日は何の前触れもありませんでした。

かつ丼天ぷらさくせんで人望を失ったインフルエンサーとその取り巻きたち10名ほどが小型のバスに乗り憂さ晴らしをしようとしていました。


彼らはネット上では唯我独尊、馬耳東風、暴虐無人な彼らでしたが、そんな彼らだからこそ息抜きが必要だったのかもしれません。

場所はひだまりの国のとある山々、自然を満喫したいということだったのでしょう。


実はこの話にもとある事情がありました。

丁度かつ丼天ぷらさくせんが実施されていたころ、このインフルエンサーたちの集団が旅行をするべく鉄道とタクシーを使ったのですが、その時トラブルが起きました。


障碍者側の手違いでその時関わっていたタクシー運転手と鉄道会社の職員両者と障碍者との間で補助をさせるか出来ないかという点でもめたのです。


この出来事は多くの反響を呼び、とりわけSNSではインフルエンサーたちの意見にたいして強烈な反対と憎しみのコメントが質量を伴って彼らに降りかかりました。


もちろん少数の擁護する意見やガチスとデンゲルの擁護コメントもあったのですが、それを打ち消すほどの勢いで怒りが爆発したのです。


それにたいしてインフルエンサー側ははじめのうちは乗り物側の不備や人格攻撃をしていましたが、旗色が悪いと感じると一転、この話に出てきた全ての人は被害者でこれを攻撃するのは憎悪をあおる下劣な人間だと言い始めました。


これが決定打となり、一般庶民の批判の声は最高潮に達し、ガチスとデンゲルはこの件から身を引きました。


こうなると今までのSNSでの優位な立場から一転、混乱と彼らの目から見た不幸、理不尽が一気になだれ込み、半狂乱の体となりもはや気持ちが折れてしまったのです。


そうしてインフルエンサーたちが現実逃避のためSNSから離れるために旅行が企画されたのです。


その一方ガチスでは彼らがこれからもひだまり分断のために役に立つのかどうかが疑問視されることになりました。


彼らを養うためにお金も手間も相当かけています。

それなのに、今回の件で分断を図るどころかひだまりの民に団結のコア (核) を与えたようにガチス幹部には見えたのです。


「役に立たん奴らだ」、一通り罵声と嘲笑をこのデンゲル人のインフルエンサーとその取り巻きたち、そして障碍者クラスターに浴びせた後、幹部たちの総意が決まりました。


もうこの犬は使えないな。

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