第266話 ねこネコ編(8)祭り之介とねこたち
祭り之介はねこたちを堪能しました。
その時間は無駄な時間にも思えましたが、一方で安らぎの時間ともなりました。
少し心に余裕が出来たのでしょうか。
「今度来るときはねこにひっかかれてもいいズボンと服を履いてこよう」
ねことのひと時は祭り之介の本来持っていた優しさをもう一度掘り起こす儀式のようなものでした。
ねこ専門家を自任する馬骨も連れてきて良かったと内心安堵しました。
ねこたちは己の欲のまま、人間に甘えてきたり逆に遊びに飽きてツンツンしたりします。
ですが、その行動を人間が理解すると、なんと言いますか、好きにさせてやりたい、わがまま勝手自由にこうどうしてほしいという欲求が人間側に出てきます。
祭り之介もねこたちをただ眺めているだけで心が安心するのを感じました。
ねこたちは多くの場合寝ています。
人間になついたり、遊んだりしたねこもゆっくり睡眠をとります。
その無防備な表情がまた人間に安心感をもたらすのです。
祭り之介はウィルスによる日々のストレスと薬の影響で頭がぼーっとしていましたが、ねこたちとの触れ合いは頭の中に安心や幸せのパウダーを蒔いたかの効果がありました。
1時間半でしょうか、2時間ぐらいでしょうか、あっという間に時間は過ぎ去っていきました。
馬骨が言います。
「もうそろそろ帰ろうか」
祭り之介は声には出さないまでも名残惜しそうにしていました。
情がうつったのか、最初になついたえなこチャンとクレちゃんを探します。
そうするとどちらのねこもキャットタワーの上から2番目の踊り場で香箱座りで寝ていました。
そろそろ潮時だと祭り之介も諦めました。
「近いうちに子供が生まれるだろうからその時また来ようか、あかちゃんねこや子ねこはまた違ったかわいさがあるぞ」馬骨が最後に爆弾を残していきました。
こうして、祭り之介のねこデビューは成功のうちに終わりました。
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