第203話 とある犬達の未来

まことに小さな一匹の犬がなけなしの勇気を振り絞って吠えました。

やがて、その声は少しづつですが、確実に他の犬達に伝わり始めました。

彼は自分の声が小さいことを知っていたので、吠える場所を選びました。


犬ではない生き物の声が届かない遠い場所、そこで地道に吠えていきます。

時々、前に述べた場所でも吠えたのですが、声がかき消されるのと、他の犬の反応が良くないので後回しにしました。


こうしていくうちに犬の中で二つの勢力に分かれることになります。

犬ではない生き物の声を聴いて、危機感を持たずのほほんとする犬達と、情報をもって現代の危機を意識する犬達です。


しかし、熊達が本格的に小屋を攻撃するにつれて、犬達の意識が変わりつつありました。

そして、その一部は大きな声が届き、沢山の犬達が一度に聞くことが出来る場所を確保することが出来ました。


しかし、時間がかかりすぎました。

小屋の外部にいた熊達の一部が侵入し、多くの犬達が熊の爪によって命を落とします。

また、犬ではない生き物もそのころは狼藉を働くようになり、無辜の犬達の多くが犠牲になりました。


そして、多くの被害が出たのち、犬達はかつて自分の先祖たちが持っていた戦う心を取り戻すことができました。


戦闘力を持つ犬の数は多くはありませんでしたが、犬達は戦闘を行う者も後方にいる者も一致結束して協力して戦うようになりました。

そのころには後方と戦闘のある前線とはほとんど距離がない状態でしたが、、、


こうしてまず、虚報と狼藉を沢山働いた犬達の裏切り者たちが処断され、その後熊達を小屋の外から追い出すことに成功します。

かつて、平和を当たり前のものとして、寝っ転がって享受していた犬達は今度こそ平和のありがたさをかみしめることになりました。


この時、猟師達は力を失い、もはや小屋を管理することも出来なくなりました。

つまり、犬達は自分のなわばりを守るために再び自分達の力を持たなければならなくなりました。


熊達も痛手を被り、しばらくは暴れることはできなくなりました。

犬ではない生き物の中で極悪な犯罪を犯した者は処罰されるか、群れから追放されました。


そして、彼らの中の穏健派や一部処罰を免れた者達は日常生活の中にとけこむことになります。

実は彼らはいい表現で表すなら慎重、別の表現をするなら臆病な性質を持っており、悪いことがしにくい環境下では比較的おとなしくしている存在なのです。


さて、臆病で弱い存在でありながら、吠え続けた犬は反省していました。


もっと早く情報が多くの人に伝わり、群れが団結することができたなら、犬達はもちろん、熊も死なず裏切り者達も裏切ることなく損害を少なくできたのではないか、もしかしたら小屋に侵入する前に犬達が集団で吠えていれば熊達も退散したのではないか、と。


さて、200回記念に書いたポエムのような文章ですが皆様にはどのような感想が残ったでしょうか。

表現の自由があることに感謝しつつ、読者の皆様の洞察力に期待をしながらお開きにしたいと思います。

ご愛読ありがとうございました。(もうしばらく、というかずっと続く予定です)






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る