第183話 平家といろはの「む」
昔より 道ならずして 驕る身の 天の責めにし 遭わざるはなし
現代語訳
昔から、自分の好き勝手なことをして得意となり、驕りたかぶった人で、天罰を受けなかった者はひとりもいません。
悪事の報いは。かならず自分自身にはね返ってくるものです。
だから天を敬い、人を愛し正しい道を歩むよう努力しましょう。
平安時代の末期、平清盛は大いに権勢を振るいました。
彼の権威は当時の皇室をもないがしろにし、「平家でなければ人に非ず」という言葉が流行るほどでした。
彼らは単に権威や権力を独占しただけではなく、自分に都合の良いように変えていきました。
彼らは皇室からは権威を、平家以外の臣達にはポスト(役割)を、さらには馬を奪ったり、妻を奪ったり、財産を奪ったりと好き放題していたようです。
こうして彼らは好き勝手な行動をしましたが、彼らの頭目の平清盛が熱病に冒されて亡くなります。
それからあっという間に反平家運動が広がり、平家は追い詰められていきます。
そして、清盛没後数年で平家は滅びることとなりました。
恐らく、平家滅亡から約4百数十年後に書かれたこのいろは歌のこの章はこの平家の出来事を念頭に書かれたのではないかと思います。
今まで、いろは歌をお読みいただいた皆様はお気づきになったかもしれませんが、戦で勝っても正気を保つようにアドバイスしたり、敵の死者に対しても敬意を持って弔うよう助言したりと驕らないように細心の注意を払っていることが読み取れます。
例え、平清盛のように皇室を凌ぐかと思えるほどに高められたとしても、天からの責めがあるというわけですから、身分の上下を問わず道を誤り驕るものはロクな目にあわないという訳です。
確かに平清盛が存命の間は、平家の威信は保たれていました。
言い換えれば、清盛自身は絶頂のうちに亡くなったことになります。
ですが、歴史は勝ち逃げを許しませんでした。
彼の業績も彼の一族の顛末も記録に残り、平家物語という有名な書物によって悪名が残ることになったのです。
近年では歴史を多角的に見ることが出来るようになり、一部再評価される向きもありますが、それでも多くの人々の記憶には傲慢さによる失敗例として残っています。
現代でも世界中で傲慢な態度を取る人は沢山います。
ですが、仮にその人物が存命中に明らかにならない悪事があったとしても、その死後に明らかになることも珍しいことではありません。
情報化社会となった今では昔とは比べ物にならないくらい良いことであれ悪行であれ記録に残ります。
もしかしたら、記憶にも残るかもしれません。
あとでビクビクしないようにするためにも「む」かしの悪人の記録を思いだして、悪の報いが自分にはね返ってこないような振舞いをしたいものですね。
さて、次のいろは歌はもし、すでに悪いことをしてしまったという自覚のある人にもよいアドバイスになると思います。
どうぞ、お楽しみに。
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