第78話 第一次言論大戦

今から20年前、ひだまりの国では言論における大争論が起きていました。

後に第一次言論大戦と呼ばれるこの社会闘争は大きくこの国の形を変えることとなりました。


ことの起こりはデンゲル人に対する差別用語が世の中に氾濫しているという国会議員の発言から始まりました。彼らはやがて徒党を組み、まず地方の条例を変えることからはじめました。


はじめにデンゲル人に対する表現はそれが批判的であれば罰金を科すという物でした。


その後ひだまりの国の表現を可能な限り漢字からひらがなに変えていきました。

それはデンゲル人の普段馴染んでいる文法をひだまりの国に強要するためでした。


こうして、昔は漢字というひだまりの国で使われた文字はどんどん消えてゆき市町村の名称も改められていきました。

そうしている間に国会議員と地方議員のほとんどがデンゲル人とその一党によって占められ、ひだまりの国の人々は肩身の狭い思いをすることになったのです。


やがて、ひだまりの人々もそのことに薄々気づいていきましたが。時すでに遅く、多くの法律や条例が彼らに恣意的に変えられてしまい、多くのひだまりの文化と歴史が失われていきました。


そして、その総仕上げをするべくデンゲル人は最後のとどめを刺そうと日々努力を重ねていたのです。


軍師コウメイはまず、地方を取り返すべくネットを活用していました。

ただし、彼はデンゲルやそれとすぐわかる表現は使わないようにしました。彼らはとても賢いのでそうした言葉をつかえば、得意の言論統制で抑えに来ることがわかっていたのです。


彼はあくまでひだまりの歴史や文化を守ることを訴えていました。これなら人種の問題とはならないからです。とにかく地方議会をデンゲル人から取り戻すことを第一に彼は努力しようと考えました。


彼は仲間と共に、地方議会選挙があるたびに、歴史や文化を大事にする人を応援し、変なカタカナや不自然なキャッチフレーズの人はよくよく吟味するように有権者にネットで訴えました。


また地味な努力としてカタカナを使う候補者の公約はひだまりの言葉に訳し、実はたいしたことはいっていなかったり、意味不明なことを言っているということをそれとなく伝えていきました。


あまり過激なことや反対を書くと、選挙法に違反するため、反対でなく分かりずらいという表現にとどめました。

そうすることで選挙民に迷いをもたらす効果を期待したのです。


こうした努力が実を結んだのか、地方議会で当落線上にいた応援議員の当選率はあがり、反対派の比率は逆に下がることとなりました。

そしてこのことからさらにコウメイは工夫を加えるのでした。

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