第71話 わっしょいざえもんのアニメ誘致

わっしょいざえもんはかねみだけ酒造に来ていました。

ひだまりの国有数のお酒の産地でありブランドであるこの企業はとても広告に熱心でした。


例えば女流囲碁のタイトルのスポンサーをつとめたり、美しい女優さんを企業のイメージガールにしたりしていました。

また、年2度行われる祭りではお笑いタレントや歌手などの芸能人を地元のしろのしろ市に呼んでにぎやかにしていました。


実はわっしょいざえもんがここに来る前日、たまたま夜中にテレビを見ていると昔の武将が出ているアニメが放送されていました。

その武将はひだまりの国でもトップクラスの人気者で、もちろん彼もよく知っていました。


そして時代劇ではなくアニメでもこういった武将が表現できるのかと感心しました。そこで閃きました。

年配者向けの時代劇だけではなくアニメでもやってみたらどうかと。


彼は行動の人です。

思いついたら即行動、なのでかねみだけ酒造に地元の有名武将をアニメ化してはどうかと提案しに来ました。

ここで面食らったのはかねみだけ酒造の担当者でした。


いくらわっしょいざえもんがしろのしろ市で顔が利くといってもこの言葉だけではさすがに動きようがありません。

とりあえずお茶を濁しつつ否定はしないようにお引き取り願いました。


わっしょいざえもんは素直に家路につきましたが、内心自分のアイデアが面白いと愉快な気持ちになっていました。

わっしょいざえもんの良いところはとにかく無邪気で面白いと思ったことは迷わず進める突進力にありました。


そのおかげでしろのしろ市では順調に有名武将のドラマ化計画への認知度と知名度はどんどん上がっていったのです。


それから1月経とうというときに、かねみだけ酒造にわっしょいざえもんは呼ばれました。


さて何の用かと伺ってみると、なんとそこにはかねみけ酒造の会長が幼い男の子を連れてわっしょいざえもんを出迎えていました。

さすがに驚いたわっしょいざえもんを前に会長はいいます。


なあに「うちの孫がアニメ好きでな、面白そうだから君の話を詳しく聞かせてくれないか」、なんと即断即決で決めたのでした。

わっしょいざえもんは驚きと同時にどうしようかと悩みました。


詳しくといっても思い付きです。

彼自身もそんなに詳しいわけではありません。

ですが折角のチャンスです。


彼は会長にこう請け負いました。

「詳しいことは企業秘密ですが、必ずやお孫さんを喜ばすようなお話を用意しますので少しい時間をいただきたい」

会長は、「うむ、期待しておるぞ」と言いました。そして孫の男の子には「テレビを楽しみにしていてね」と請け負いました。


「無責任男である」ですが、彼は宿題をこなすため今度はどのようなアニメにするのか、そのアイデアを探すべく奔走するのでした。

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