第12話 鬼策 炎上商法

フウイは慎重な人物です。

それは裏を返せば過激な方法を思いついても選ばないことを意味します。

今回は彼の頭に浮かびそして却下した方法となぜ却下したのかを説明しましょう。


彼が思案したのはずばり炎上商法です。

具体的にはN国党の話題、支持者、アンチのいる場所を狙い片っ端から主張を宣伝するというものでした。


それも過激な要求の形でNHKに島津義弘を大河ドラマに押し付けるという方法でした。


もし、この方法をとれば認知度は抜群に上がり、この運動自体が熱意をもって行われある意味効率的に進んだかもしれない。

事実巨大な組織に立ち向かうというシチュエーションはネット民の一部にとっては魅力的でした。


そして、話題が大きくなれば少し時間をおいて南九州の地域も挙兵するがごとく参加人数を増やし一気に雌雄を決する。そのように考えていました。

もちろん勝敗は時の運、兵家の常でありうまくいかないリスクは存在しました。


だが、彼がこの方法をとらなかったのは成功率が低いからだけではありません。

孫子は道(つまり味方全体が1つであれば勝ち、別れれば負ける)と諭していました。


もし、ネット民が怒りに任せ、南九州の人々がその姿に唖然とすれば大河ドラマの実現どころかお互いの関係がこじれることになる、そしてNHK側はかたくなな姿勢をとるのは自然なことでした。


そしてフウイは彼を知り己を知れば百戦危うべからずを実践したいと考えていました。

この彼とは必ずしも倒すべき敵ではありません。


交渉で相手が飲める条件を出して味方に出来るのであればその方がわだかまりを持って大河を放映するよりも関係者がみんなで幸せになれるというものでした。


その条件とは大河放映前にネット世論を味方につけ「いだてん」の教訓から学ぶことです。

もし史上初ネットでの誘致活動成功ということであればネット民も面目が立つだろうとフウイはと考えてました。


この構想においてやはり弱点となるのは南九州でした。

シナリオとしては地元で運動が広がりそれを見てネット民が助っ人となる。

このシナリオがベストだとフウイは望んでいました。


なぜならフウイの中では島津義弘は「一所懸命」の体現者で自分の地は自分で守るというのがテーマの一つであろうと考えていたからです。

それを彼らの子孫たちが実践しないとネット民が見なした場合この計画は成り立たない。

さすが薩摩隼人とネット民を納得させる必要がある。


とはいえ祭り之介の立場もわかる。

彼もまた援軍が必要であり、今のままでは地元の無関心という無実の敵に負けてしまうのだ。


スタートとゴールはおぼろげながら見えている。

あとはその間に立ちはだかる山をどうやって抜けるかだ。

フウイはさらに思考に沈み工夫の一手を探し始めました。

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