其の拾漆 「イヒカ様」{怖}後編

だけどな、何で野菜が無くなったかの謎は、本当なら俺は見れるはずだったんだよ。


なんせ現代っ子の俺だから、40GBハードディスク録画の結構するビデオカメラを持参して三回忌に行ってたんだよ。次、死ぬかも知んないのはばあちゃんだから、今の内に撮っとかないとなって思ってさ。


昨日、井戸に野菜をお供えした夕方の時点から、朝起きて野菜が無くなってた事を確認した時まで、家の中からだけど、ばっちり録画セットしといたって訳よ。

イヒカ様?とやらを信じてるばあちゃんには悪いとは思うけど、無くなった野菜の真相はこれでバッチリだった筈だったんだよ。


正直いうとあんましメモリうまってないしーと思ってやっぱりというか、面白半分で、「なんか映るんじゃね?」とか考えて撮ったんだ。

期待してなかったけど、一応帰りの電車の中でメモリチェックしてみたら、何か多分ヤバイ物が写っててな。


時刻的にはAM3:00位の事


井戸の淵の方で、チラッと何かが動いたのが見えたんだよ。何度も再生して確認したし、間違いない。

その直後、画面が真っ白になった。多分蛾だと思うんだけど、何かがカメラのレンズか窓に止まった感じで、15分位真っ白な画面しか見えなかった。

しかもその間、って


…ボソッ…ボソボソッ……ボソ…


って感じの蛾の羽音?みたいな音が録音されていたんだよ。


そこで、なんかすっごい怖くなってきたんだ。


でも俺は、録画止める直前に撮れているであろう、野菜が無くなってんのを見た叔父さんとか叔母さんのリアクションが見かった。だからずーっと早送りして見てた。


そしたら時刻にしてAM5時頃、俺が起きて確認する前の映像に、叔父さん達が野菜が無くなってるのを見に来てるシーンがあったんだよ。井戸の中覗き込んだり、周りをキョロキョロ見回したりしたりしててさ。


念願のシーン見て軽く吹き出しかけたんだけど、カメラに気が付いたらしい叔父さんが寄ってきて、レンズ覗き込みながら一言。





「……呪われるぞ………」




それ聞いて、笑いが一気に引いて背筋が凍った。

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