其の拾肆 「報復」{怖}
少し前まで私は、怪談が好きでした。
怪談投稿サイトで読んだり、某動画サイトで朗読を聞いたりしていました。
時々は、私自身で書くこともありましたが、殆どが創作のものであり、自分自身で体験したことなど一度もありませんでした。
そんな私が、盆に実家に帰った時の事です。
その時も、いつものように甥と姪の二人に怪談を話すようにせがまれていました。
これは、毎回恒例のようになってしまった行事で、最初は
「寝る前になにかお話を聞かせて」
的なことを言ってきた甥にさるかに合戦を聞かせたんです。
そしたらそれ見た姉が「こっちおる間、毎日頼むわ」って感じで押し付けてきて、なんだか私がそういう係みたいになってしまって.......。
面倒臭くなってきてしまった私は、ある日
「怪談を聞かせりゃ怖がって来なくなるだろう」
と思いつき、何だったかは忘れましたが結構怖めの話をネットで見つけてきて話しました。その結果、思いの外食いついてしまい、毎回話すことになったんです。
で、今回は私が書いた話を話したんです。こう、朗読書の方の声真似使ったりして怖がらせれるような事を色々やってみたところ、今までで一番怖がっていたんです。
私としては、特に自分が書いたものなので怖がってくれて満足だったんです。
そんな満足感と共に眠りについた私は、夢を見ました。
夢の中で私は、自分が寝ているのを上から眺めていました。
私は状況が全く分からず、しばらくの間、ボーッと眺めていました。
すると突然、変化のなかった部屋の、私の死角でスーと部屋の襖を開けたような音がしました。
驚いてそちらを見ようとしましたが、視界を動かすことができません。
そこで軽くパニックになりかけました。
なにかがいるのに、居る事は分かるのに、見ることができないという状況が、とても怖く、恐ろしかったのです。
何とかして視界を動かそうと躍起になっていると、また、スーと音がしました。
襖を開けて這入って来たそれは、人の形をした黒いなにかでした。
それは、寝ている私の枕元まで音も無く移動すると、その私の顔を覗き込んでいましたが、しばらくするとこちらを見上げて、その真っ黒で何も無い思い出すのも恐ろしい顔をこちらに向けて、言いました。
「そんなもんで済むと思うなよ」
今まで聞いたことのない、気持ちの悪い声でした。
この一件以降、一度も姪や甥に怪談を聞かせていません。
これが私が、怪談は軽々しく創作するもんじゃないと思った原因の一つです。
皆さんも、気をつけないと報復に遭うかもません。
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