其の拾参「おっさん」{不}

最近よく見るおっさんの話なんだけど、聞いてくれ。


そのおっさんを初めて見たのは、半月くらい前の事だ。

通学路歩いてて、いつの間にか僕の前歩いてた。だるんだるんのジャージ着てて、頭が禿げてんの。そして歩くのがめっちゃ速い。

あと、頭のハゲでおっさんだと判断してたのは内緒だ。


前を歩いてるそのおっさんに何か違和感を感じたんでじっと見てたんだけど、そのおっさん、左右の手を同時に出して歩く、いわゆる『ナンバ』で歩いてたんだ。

それだけだったらまだ


「変な人だなぁ」


って感想だけで済んだんだろうけどな、そのおっさん裸足なんだよ。そこで気づいた。

ああ、ホームレスだ。

僕アメリカに住んでんだけどな、結構見るんだわ。


最近気付いたんだけどさ、僕おっさんの事正面から見た事無いんだよ。

それに気づいてから結構色々工夫しておっさんの前に行こうとしたんだけど、どれもこれもことごとく失敗した。


いつもより2分早く家を出てみたけど、やっぱり前を歩いていたり。

わざわざ反対の歩道で歩いて、足早いおっさんにやっと追い付いて


「いける!見える!」


と思ったら急に交通量が増えたり。

てな感じでどうやっても見れんかった訳。


でさー今日ね、もういっこ気付いちゃた訳よ。

今11月だからさ、街路樹あるわけだし落ち葉ってそれなりに落ちてんだよな。

わかると思うけど踏んだら音鳴るだろ?

おっさんめっちゃ踏んでんのに音鳴ってないんだよなー。


さらに、走ってきたチャリが貫通した。

何を言っているのか分からないかも知れないけれど、事実なんだからしょうがない。

僕の後ろから走ってきたチャリが全然減速せず走ってって、「危ない!」と思ったら通り抜けてった。


そうです。今日気付いたってのはおっさんがじゃあ無いって事。

今まで何も無かったし、実害は無さそうなんだけど、これからも毎日居るって考えると少し怖い気もする。

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