第4話 拳銃が泣いている

あれからダニーやジェニーと色々なことを話した。

まず俺自身のこと、名前や住んでいた場所など話したのたが、なかなか2人が納得するまで骨が折れた。

大した人生は送ってはいないのでここでは省く。

しかし、日本名は彼らにとって言いにくいらしくこのままブロンドと呼んでもらうことにした。

ちなみにダニー曰く、日本のような国も存在するらしい。

逆に、俺からもこの世界のことを聞いた。

今は1897年で、この世界は一見アメリカの西部開拓時代に酷似しているが住人たちは中世ヨーロッパ時代使われていた魔法が退化したもの(彼らはそれをギフトと呼ぶ)を持っているということだ。

そして、この辺りはまだ開拓中でかなり治安が悪い。

あらゆる犯罪の巣窟だそうだ。

さらには、ホワイト家とブランド家と言った金持ちが対立していて、そのホワイト家の用心棒兼事務係として俺が憑依したブロンドは働いていた。

なかなか頭の切れる男だったようで、当主からもたった3年で信用を勝ち取るほどだ。

ただ、ギフトはジェニー曰く「くその役にも立ちやしねぇ」と評されているもので、試してみたが可燃性のガスを少量を指先から放つというものだった。

さて、逃げ回っている俺たちは今夜荒野で野宿することになる。

彼らは屋敷目指しているのだが、敵だらけの街を通るわけにはいかないのでかなり遠回りしているらしい。

「こんなところでグズグズしてる場合じゃあないだろ、、、」

ジェニーはかなり落ち着きがない。かなり、心配しているようだ。

そこでダニーが「落ち着けジェニー街は敵だらけだ。それに休まなきゃ動けねぇぞ」となだめる。

ちなみに俺は、未だに恐怖が拭い切れていなかった。

当然だ、今まで俺は誰かに命を狙われるような場所で生きてきたわけではない。

いきなり放り込まれたんだ。

ジェニーやダニーのように振る舞えるはずがないんだ。

「まぁジェニー、ブロンドそろそろ寝ろ。俺が見張っといてやるからよ。

屋敷に戻るのは明日だ。」

ダニーはそう言って俺とジェニーを簡易テントへ行くよう促す。

「な、なぁ屋敷に行かずに明日遠くに逃げようぜ」

ついに俺は言ってしまった。当然だ、俺にはホワイト家のことなんて関係ない。死ぬのはごめんだ。

すると、ダニーは首を振った。

「ダメだ。屋敷を放っておけない。」

「だってよ!ブランド家にボロ負けしたんだろ?もしかしたらもう」

すると、言い終わる前にジェニーが飛びかかってきた。

俺は自分の体を支えきれずに倒れそのままジェニーが馬乗りになった。

そして彼女は、銃を引き抜くと俺の額に当てる。

「てめぇ、、、少し黙れ」

彼女はかなりイライラしていたし、俺の発言が火種となり爆発したのだろう。

「、、、大切なのは、他人の命よりも自分の命だろ!

君達も逃げた方がいいじゃないか!

毎日あんなに敵に襲われてたら、いずれは死ぬ!」

「おいおいおい、、、ブロンド、、、

まず、あたし達はまだ負けちゃいない。

それに仲間が殺されたんだ、その落とし前をつけずに負け犬のように逃げれるか?」

「じゃあ、、、俺だけでも逃してくれ、、、だって俺には関係ないじゃないか!」

俺がそう言うと、「ふっはははは」ジェニーが笑い出し、「お前だけで逃げれると思うのか?中身は違うと言っても、外見はブロンドそのもの、あたし達と逃げてきたお前が、あたし達から離れてこの包囲網から逃げ切れるとは思えないね!」と勢いよく言うが、途中で少し悔しそうな顔になると、「それに本物のブロンドは大切なあたし達の頭脳なんだ、、、戻ってくるかもしれない彼をまだ失うわけにはいかない」と言う。

俺の意思は全く尊重されていない、そう感じた。

「それでも、、、屋敷の場所は敵にバレてるんだろ?

わざわざ死ににいくようなものじゃないか!

俺は行きたくない!」

するとジェニーは急に冷めたように銃を額から、外すと俺の横に銃を置き立ち上がる。

「わかったよ、、、1人で逃してやるよ。あたしとダニーだけでいく」

俺はほっとしてため息をついた。が、

「その代わり、お前がこの世界で生き残れるかテストしてやる。

銃を取れ!」と彼女は言う。

「え?」

「早く取れ!」

俺は言われるがままに銃を取った。

「あたしを撃て」

彼女の目は本気だった。

「ま、待ってくれ。撃てるわけないだろ?」

「黙れ!早く撃て!」

「ダ、ダニー?」

ダニーの方を向くと彼は腕を組み下を向いている。

「くそっ、、、」

俺は仕方なく銃を構えた。恐怖で手が震え全く彼女に標準が合わない、トリガーも引けない。

この女は何を言っているんだ、、、撃てるわけがないだろう。

数十秒間構えたが、俺はとうとう銃を下ろす。

悔しさで、俺は震えていた。

「くっ、、、」

「、、、あたし1人撃てない度胸のお前じゃあ逃げきれない。

これで分かったろ?」

彼女が手を差し出し、俺は銃を渡す。

そして、俺の肩に手を乗せると「安心しろあたしがお前を守るよ」と言って、そのまま歩いて行ってテントの下で横になった。

俺は力が抜けその場に座り込む。

あの銃を握った時の重みや木の質感がなかなか消えなかった。

2.

「おい、起きろ」

次の日俺はジェニーの声で目が覚めた。朝日が辺りを照らし始めている。

少し眩しいがなんとか、彼女へ目を向けた。

「なんだ?」

俺がそう彼女に問うと、「お前、、、昨日の銃の構え方かなり酷かったぞ。

あたしが銃の構え方教えてやる」と答えた。

俺は彼女に引っ張られ、起こされた。

そして銃を渡される。

「いいか?まず右手で持て」

昨日のこともあり、あまり銃には触りたくないのだが、逆らったらまた何されるか分からないので俺は何も言わずに従う。

「次に右手を前に伸ばしきらないように伸ばせ、、、そうそう、それで左手を添える。

力の入れ方は大体右より左のほうが強くだ。」

言われた通りに構える。

そしてジェニーは「んで足は左足が前」と言って、俺の足を蹴った。

「いてっ!何すんだよ」

皮の靴で蹴られるというのは、なかなか痛い。

「いいから、、、それから少し前傾姿勢だ」

俺は片目を瞑り、目の前にあるサボテンを狙った。

「ダメだ、目は両方開けろ」

少し狙いにくい気がしたが、言われた通りにしてみる。なかなか標準が合わないが、なんとか調整してみる。

「撃ってみろ」

彼女にそう言われ俺は思いっきりトリガーを引く。

鋭い発砲音がすると、銃弾はサボテンの先に当たりそこを少し焦がした。

周りにいた鳥が発砲音に驚き一斉に飛び立つ。

すごい反動だった。

「、、、少しはマシになっただろ」

ジェニーは俺の背中を叩いた。

「そいつ(銃)を持っておけ、弾は当たんないけどないよりマシだからね」

さて、かなり音が響いていたので「おいおい敵のお出ましか?」

と言って、ダニーが起きてきた。

俺が寝る前は起きていたが、寝た後ジェニーとダニーは交代しながら辺りを見張っていたらしい。

「おはよう、準備しろ。出発だ。」

俺たちは直ぐに準備を済まし、屋敷を目指した。

だけどその前に俺は少し乗馬をジェニーに教わったが、結局乗れなかったのでまだ後ろに乗っている。

半日ぐらい経ってから、荒野を越え俺たちは屋敷へと着いた。

馬は馬小屋に入れておいた。

「2人とも、準備しとけよ」

ジェニーがそう言って銃を構え、先頭に立つ。

敷地は結構広いのだが、全く人気がない。

そして、俺は何か柔らかいもの踏んだ。

「!!!!」

俺は驚きすっ転ぶ。よく見ると、それは少し腐りかけている死体だった。近くには壊れた銃が落ちている。

「うっ、、、」

その酷い見た目と匂いで吐き気が一気に襲ってくる。

俺はその場から急いで離れ、草むらに胃の中のものを吐き出した。

ジェニーはその死体に気づくと、調べ出す。

よく平気だ、、、

俺は心の中で少し感心する。

現代にいた頃、よくグロテスクな表現がある映画などを見ていたが本物の腐った死体はそんなものの比ではなかった。

「赤髪、、、?こいつ、、、うちのやつじゃないな」

ジェニーは死体の髪に触れた。

「ジェニー、死体の調査は後だ。とりあえず屋敷を見に行こう。

ちなみにブロンド?大丈夫か?」

ダニーが俺に問うので「あぁ、少し気持ち悪くなっただけだ」と答えたが、また吐いてしまった。

「とりあえず、そこにいろ。敵が来たら知らせてくれ」

そう言って彼らは俺を置いていく。

「はぁ、、、はぁ、、、」何十分か経って、ようやく吐くものが底をついた。

正直もうごめんだ。

そして、立ち上がろうとした時馬の走ってくる音が聞こえてきた。

だんだん大きくなり近づいてくる。

俺は近くの塀に隠れながら、その音の方を見ると10人ほどの男達がこちらに向かってきていた。

俺はすぐさま屋敷の方へ走り出した。

まずい、、、やっぱりここは敵の巣窟だった!

3.

「いいか、、、決して声を出すなよ」

ダニーは手に2つのバレルのついたショットガンを握っている。

ジェニーも銃を手にした。

俺たちは今この屋敷の当主の部屋に駆け込んだのだが、あまり隠れれるものもなく机を前にし3人で隠れている。

ダニーの図体がでかいので少し窮屈だ。

「敵は10人以上だったんだな?ブロンド」

ダニーが俺に問う。

「あぁ、、、そうだ。」

屋敷の正面玄関の扉が何度も開いたり閉まったりする音が屋敷内で響いた。

敵が入ってきたようだ。

しばらくして、部屋の中に2人ほど入ってくる音がした。

何か話している。

「どこかにいるはずだ、、、あのゲロを吐いた奴が、、、」

完全に俺のゲロのせいで、この屋敷内にいることがバレていた。するともう片方の男が話す「ただの放浪者か死体漁りじゃねぇか?」

そう言われるが、もう1人は反論した。「おいおい、考えてみろ。死体漁りとか、放浪者が死体で吐くわけねぇだろ。

だから怪しいんだろうがよ」

すると、もう一人は「でもよぉ、死体に慣れてるホワイト家の用心棒も吐かねぇよ」と言い返す。

面倒臭くなったのか、男は「ごたごた、言ってねぇで探せ」と強引に会話を終わらせた。

ダニーはジェニーにかなり小声で「いいか、俺が合図したらジェニーは右の男に行け。俺は左の男だ。」と言う。

彼女は、彼の合図を待つ。

しかし、片方の男が「まぁでも、少し疲れたしよ。タバコでも吸おうぜ」と言いタバコに火をつけ始めた。投げ捨てたられた、マッチの燃えかすが俺の前に落ちる。

「ちっしょうがねぇなぁ」

と言ってもう1人は合意すると、自分もタバコを取り出して火をつけはじめた。

「いやぁ、、、しかしよぉ、お前聞いたか?」

「何が?」

「出かける前に聞いたんだけどよぉ。

今回、ここの当主をランバルトさんが拷問するらしいぜ」

「あのランバルトさんが?できるのか?」

「さぁな、、、あの人が拷問してるところ、想像できねぇ」

ジェニーが、反応し「、、、ホワイトさんは、ブランドの所にいるのか」と呟いた。

そして、少しの間沈黙が続き2人がタバコを嗜んでいると「おーーーーい!お前ら!」と彼らの仲間が慌てて呼んでいる声がする。

「なんだ!?カウボーイ!」と片方が声を張り上げて問うと。

「よく聞け!さっき馬が入れられた痕跡があった!2頭だ!敵は1人じゃない!少なくとも2人はいるぞ!さっさと見つけて、はらわた引きずり出すぞ!」

そして、彼らがその声に集中してる隙をつきダニーとジェニーが飛び出すと、2人を羽交い締めにした。

彼らは少し抵抗しようとしたが、銃の感触を感じたのかおとなしくなる。

「動くな、頭をぶち抜かれたくなかったらな」

ジェニーは耳元でそう囁いた。

さらに「いいか、、、了解だ、とだけ叫べ」と続けて男に指示をする。

「り、了解だ!」

男は声を張り上げ指示通りに叫んだ。

「何かあったら、すぐ呼べよ!」

その返事の後、その声の主は遠ざかった。

「さて、あたしの質問に答えてもらうよ、、、お前達がホワイトさん、当主を拷問する理由はなんだ?」

ジェニーにそう質問され、怯えた様子で「それは知らない」と言う。

そして「俺たちは用心棒の残党の掃討を任されただけの下っ端だ」とダニーに捕らえられている方がつづけた。

「はぁ、、、ぶち抜くしかないのか」ジェニーがため息をついた。

「ま、待ってくれ!本当だ何も知らないんだ」

男は慌てた様子で喋る。

だいぶ余裕がなくなってきているようだ。

「じゃあ、もう1つの質問には答えろ、、、外の赤髪の死体はなんだ?お前らの仲間か?」

「あぁ!あれか!あれは、盗賊だよ!話題の"狂人"の一味だ!」

「"狂人"その本人か?」

「いや違う。あれはただの仲間だ。何人かいて、"血塗れの"ビリーは知っているか?」

「あぁ、あたし達のリーダーを殺した男だ」

ジェニーは銃をギュッと強く握った。

「そのビリーが殺ったんだよ。だが"狂人"には逃げられたらしい。

彼も相棒の銃を失ったんで、かなりイラついてるって噂だ」

先程の死体の近くにあった銃か、、、

「なるほど、、、盗賊が絡んでいるとなると、狙いはホワイトの遺産か、、、」ジェニーが呟く。

「ホ、ホワイトの遺産は存在するのか?」

すると、ダニーに捕らえられている方が反応する。

するとダニーは「さぁな、、、ただのでっち上げかもな。人間は噂が好きだからな」と言った。

コンコンッ

不意にノックをする音がする。

誰かが、様子を見に来たようだ。

「おい!お前ら!もしかしてサボってるんじゃあねぇだろうなぁ?」

そのノックをした男は、少しイライラした口調で言う。

そして、ドアのノックに手をかけ開けた。

扉を開くと、目の前の光景に唖然とする。

ジェニーの銃口はすでに彼の方へ向いていた。

「やぁミスター、ショータイムの時間だ」

ダンッ

ジェニーはその男に銃弾を放った。

男の額に銃弾は穴を開け、その穴から血の噴水が吹き白い壁紙を鮮やかな赤に染め替える。

ダニーは、そのまま羽交い締めにしていた男を床に叩きつけると。

ドアから飛び出し、ジェニーの発砲音で寄ってきた1人の敵に散弾を浴びせた。

ちなみに俺たちがいるのは、1階だ。

すぐに敵が集まってくるかもしれない!

だけど、俺は未だに机の裏で頭を抱え怯えていた。

ジェニーは男を羽交い締めにしたまま部屋から出ると、ダニーとは反対の方向に進む。

彼女の方へは、4人来た。

その4人は仲間が盾にされているのにもかかわらず、容赦なく発砲する。

銃弾を浴びせられて、盾にされた男は息絶えた。

ジェニーは盾にいている男を捨てると2発銃弾を放ち2人を亡き者にした。

しかし、さすがに4人はきつかったのか肩に1発くらってしまった。

「ちっ」

舌打ちすると彼女はすぐさま、近くの部屋へと入った。

そこは、少し広くて客人をもてなす場所であろうか。

ジェニーはすぐに机の下へと身を隠した。

男達は慎重に部屋に入ってくるが、ジェニーは近くに来た1人目の男の足を撃つ、彼は「あぁぁぁぁあ」っと叫び声を上げながら倒れるとジェニーは容赦なく頭を撃ち抜いた。

もう1人はというと、机の下に向けて銃を乱射した。弾がなくなるまで撃ち尽くすと、殺せたのか確認するため恐る恐る机の下を覗く、「地獄でまた、銃の撃ち方教えてやるよ」ジェニーは男の額に銃を当て、そのままその男を殺した。

だがさっきの乱射でジェニーはさらに足を撃たれたようだ。

「流石にいてぇな」

ジェニーは肩を押さえ足を引きずりながら俺のいる部屋へ戻ってきた。

「う、、、う、、、」

ちょうど先ほどダニーに叩きつけられた男が目を覚ましている。

「ち、ちくしょう、、、」

ジェニーは怪我で、もう限界がきているのかその場で倒れた。

だが、隣の男が意識を取り戻した以上彼女はかなり危険な状況だ。

助けれるのは俺だけしかいない。

俺はジェニーのくれた銃を引き抜く。

重い、手が震える、怖い、なんでこんなことしなきゃいけないんだ、、、

いろんな思いが一気に込み上げ、俺は涙を滲ませ目を瞑る。

だが、なんとか勇気を振り絞り、机から飛び出すと銃口を男に向けた。

この距離なら外さないだろう。

撃ちたくない、撃ちたくない、撃ちたくない、撃ちたくない!

でも、ここでこの男を放っておいたらジェニーは殺される。

「くっ」

なかなか、トリガーを引けない。

少し力を入れればいいはずなのに全く力が入らないんだ。

「、、、この雌犬がぁ!殺した後もおかしてやる!」

男の目にはジェニーしか写っていないようだ。

自らの銃を引き抜こうとする。だが、まだ意識が戻ったばかりだからか、なかなかうまくできない。

チャンスは今しかない!

「うわぁぁぁぁあ!!!!!!!!」

ダンッ

俺はとうとうトリガーを引いた。

真っ赤な血溜まりが俺の足元を覆う。

そして何かが肩にのしかかってきたような気がした。

重い何かだ。

「はぁ、、、はぁ、、、」

俺は力が抜け銃を床に落とす。

人を殺してしまった。

初めて人を、、、とても、暗いものが俺の心を覆いはじめる。

すると、ジェニーが俺を見て言った。

「ありがとう、、、助かった。でも、、、お前初めて人殺したんだろ?」

俺は黙って頷く。

「初めての殺しは絶対忘れられない、私がそうなんだ、、、何人も殺してきたけど始めてがずっと忘れられない。

でも、お前はブロンドになってしまった以上生きたいなら戦わなくちゃならない。

すぐには無理かもしれないけど、まぁ、、、何というか、、、気にするな

これがこの世界の常識なんだから」

彼女は、手を伸ばし俺の手を握ってくれた。

気づくと俺は涙を流している。

久しぶりに泣いた気がする。

「おーい2人とも」

すると、ダニーが血だらけで戻ってきた。

慌ててジェニーは、俺の手を離す。

「ぶ、無事か?ダニー?」

彼女がそう問うと、彼は「あぁ、2人殺ったが、1人逃しちまった」と言う。

「そうか、、、仲間を呼ばれるかもしれないな、急がなくちゃな。

ジェニーが立ち上がろうとし、倒れかける。慌てて俺は彼女を支えた。

無理もない、こんな大怪我をして立てるはずがない。

「ジェニー、血を流しすぎだ。まずは、応急処置をダニーにしてもらおう」

俺は何とかジェニーをなだめて、彼女を横たわらせる。

「俺は治療系のギフトだが、、、時間はかかる、だからある程度治ってから、行動だ」

「わかった、、、なぁ、ダニーこれからどうするんだ?」

俺がそう問うと。右手でジェニーを治療しつつ、彼は左手であご髭を触りながら、考える。

まだ殺した感触が拭い切れてはいないが、ジョニーの言葉を聞いてもう次の行動をするしかない、その思いが俺の中で一番強かった。

しばらく、沈黙が続くとジェニーが口火を切った。

「今この現状、あたし達だけでブランド家と戦うのは厳しい。

頼れるのは、、、フラッシュだ」

「、、、管理人の場所を知っているのかジェニー?」ダニーがそう聞く。

「いや、今どこにいるかは、わからない。でも知ってる人がいる、、、

本当は行きたくないんだけどなぁ」

ジェニーは少し悩ましそうに頭をかいた。

「、、、親父さんか」ダニーがそう言うと。彼女は「あぁ」とだけ答える。

さて、この後すぐにジェニーへの治療は完全とは言えないものの、動ける程度には終わった。

ジェニーの父親、、、いったいどんな人なのだろうか。

4.

俺たちは取り敢えず、変装するための服に着替えるために屋敷の中を探った。

俺はブロンドの部屋に入る。

俺は自分自身が憑依している人物のことを知った方がいいと思ったからだ。

しかし、入ってみると彼の部屋は、特に特徴のない部屋だった。仕事用の机と本棚それだけがある。

引き出しを開けると、中には多くの書類があった。

そして、そこに金属製の人形のようなものがあることに俺は気がつく。

俺は椅子に座りそれを眺めようと、手に取ったその瞬間激しい頭痛が襲ってきた。

「ぐっ、!、、、、」

今まで味わったことのないような激痛だ。本当に頭が割れたんじゃないかと思った。

だけどその時に、どこからともなく声が聞こえできていることに気がついていた。

「役目を忘れるなブロンド、お前の役目は、、、役目、、、やく、、、や、、、、」

そして、俺は倒れ込む。なかなか頭痛は消えない。

「、、、おい、、、大丈夫か?」

しばらくして頭痛が治まり目を開けると、ダニーが俺の顔を覗き込んでいた。

「、、、いきなりだ、、、あの金属の人形みたいなのを触ったら頭痛が」

「これか?」

ダニーは無用心に手に取り、それを眺める。

「お、おい!、、、なんともないのか?」

ダニーは平気そうだ。

「、、、なんともねぇな、ま、無理すんな出発まで休んどけ」

そう言ってダニーは部屋から出て行った。

俺は、もう一度その金属製の人形を手に取ってみた、だが今度は何も起こらない。

あの激痛はなんだ?

さっき聞こえたのはブロンド本人の記憶なのだろうか、、、役目、、、彼の役目。

考えても、わかりそうにはないか。

俺は着替えを済ませ部屋から出ると、ジェニーがなんとドレス姿で立っていた。

「!!!え??ジェニー??」

俺は思わずそう言うと彼女は少し、頬を膨らませ「あぁ、そうだよ!なんか文句あっか?」と言う。

意外と言ったら、怒られそうなので口には出さなかったが似合っている。多分喋らなければ、多くの男が寄ってきて、大変なことになりそうな勢いだ。

「さてと、俺も着替えは終わりだ」

ダニーは髭を剃りかなり印象を変えている。そして、かなり清潔感のある感じになった。

「いいか?これから街に行く。決して目立った行動はとるな、いいな?

あとジェニー!」ダニーはジェニーへ目を向ける。

「ん?」

「喋り方を女らしくしろいいな?」

「えぇ、、、女言葉まどろっこしくて嫌いなんだよ、、、」

ジェニーは面倒臭そうに言う。

「いいから、言う通りにしてくれ」

「ちっ、わっったよ」

「違うだろ?ジェニー」

「はぁ、、、わかったわよ」

俺たちは馬を1頭用意し、それにジェニーを乗せ街へ向かった。

田舎道を通り、しばらくして街へと着く。

「さて、親父さんはどこだ?」

「、、、この前ジョージが殺された所よ、そのバーがお父さんの店」

「、、、リアムがジェニーの親父さんだったのか!」

ダニーは驚いたように言う。

俺は何のことかはよくわからない。

「えぇ、とは言っても本当の父じゃないわ。

あたしはあの家で暮らしていたのは14歳まで。そこからは、ホワイト家の馬小屋ね。

知ってたのはホワイトさんと初仕事に付いてきたジョージぐらいよ

別に隠してたわけじゃないけど、話す必要もないと思ったから、、、やっぱ話しにくいなぁ」

「親父さんとうまくいってないのは知ってたが、まさかあのマスターがジェニーの、、、」

「ダニー知り合いなのか?」

俺がそう聞くと彼はうなずく。

「あぁ、昔ホワイト家で用心棒として働いてたんだ。

ただ、俺は詳しくは知らないんだが今はホワイト家と深い溝が出来ちまったらしくてな。

ジョージがよく行ってたバーだ」

そうして、いろいろなことを話しているうちに俺達はその目的のバーへと辿り着いた。

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