第25話

「恋次君の好きな人、物凄く気になる……」


 俺が小さく尋ねると恋次君が笑う。


「俺の名前の通り恋は二の次だ。


 俺は俺が好きな女の幸せを願う」


「自分でその子のを幸せにしようとは思わないわけ?」


 遥ちゃんが、そう言うと恋次君が一瞬だけ悲しそうな表情になる。


「そいつが、そいつの振られ傷つきどうしょうもなくなったとき……

 俺がそいつを助けるんだ。

 今の関係ならそれができるからな……」


 俺はその時思った。

 恋次君の好きな人ってもしかして遥ちゃん?

 俺は口には出さなかった。

 心の中にしまっておくことにした。

 仮にそうなのなら遥ちゃんが好きな男って誰だろう?

 今の彼氏?でも、そんな感じじゃないよね?

 わからない。

 俺にはわからないことだらけだ。

 俺に彼女が出来ない理由が、今わかった気がするよ。

 俺は人のことがわからなすぎる。

 自分のことしか頭にない。


「一どうしたの?

 表情暗いよ?」


 清空が、そう言って俺の体を胸に寄せる。

 これが、大きな胸の女の子ならドキドキタイムなんだけど……

 清空はまな板。

 ドキドキタイムは、そんなにない。


「なんでもないよ」


 でも、なぜだろう?

 清空の匂いは、いつも暖かくいつも優しくいつも懐かしい。

 俺の心が安らぐのは何故だろう?

 かみさまが用意してくれた女の子だからかな?

 そしたら、清空は地獄に落ちたくないからこんなに積極的なのかな?


「どうしたの?

 一君……清空ちゃんの胸で欲情でもした?」


「……もうちょっと清空に胸があればなぁ」


 俺はそう言って清空の胸に手を当てた。


「うぅ……

 ごめんね。

 私にもうちょっと胸があったなら……」


「そうだな。

 もうちょっとあったらな……」


 俺は、その胸を撫でる。


「私の胸で良ければいつでも揉んでね。

 そしたらちょっとは大きくなるかも知れないから……」


 清空が、涙目でそういった。


「えっと清空ちゃん?」


 遥ちゃんが清空の名前を呼ぶ。


「なぁに?

 遥ちゃん」


「怒ってもいいのよ?」


「どうして?」


「胸もまれているぞ?

 それってセクハラとか痴漢とかそういうのになるんじゃないのか?」


 恋次君が、そう言うと清空が笑う。


「好きな人には触ってもらってもいいんだー

 私の好きな人は一!

 私の胸は、一専用だよー」


 清空は、照れながらそういった。

 ちょっとかわいいと思った。

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