第26話

 でも、俺も少し照れるので清空の旨を揉むのをやめた。

 そして、遥ちゃんの方を見る。


「あら?私のも揉んでみる?」


 遥ちゃんがいたずらっぽく笑う。


「……いいの?」


 清空と違って遥ちゃんの胸は大きい。

 揉み心地って違うのかな?

 興味が湧いてきた。


「そうね。

 一君の童貞をくれるならいいわよ?」


 それは、願ったり叶ったりで……


「どうする?」


 遥ちゃんがそう言って俺へと一歩近づく。


「どうするって?」


 俺の言葉に遥ちゃんはクスリと笑う。


「大人なお姉さんは好き?」


「えっと……」


 好きだけど……


「ダメだよー

 一のドーテーは私のものー」


 清空が、そう言って俺を抱きしめる。


「一、モテモテだな」


 恋次君が茶化す。

 するとそこに咳払いが響いた。

 俺は、咳払いをする方に視線を送る。

 遥ちゃんの父親である春雨 田茂(はるさめ たも)さんだった。

 ちなみに医者である。

 この警察病院の院長。


「一君、娘とは一体どういう関係で?」


 田茂さんが、ニッコリと笑う。


「ちょっとパパ、邪魔しないでよ!」


 遥ちゃんが田茂さんを睨む。


「遥かは黙ってなさい。

 今は、わたくしは、一君と話しているんだ。

 一君どうなんだい?」


「えっと、お友達です」


「友達以上の関係ではないと?」


「えっと、少なくても恋人までの関係ではないです」


 それを聞いた田茂さんは、ため息をついた。


「ダメだぞ、一君。

 ここは、しっかりと『遥かは俺のものだ!』って言えるくらいの男にならないと……」


 田茂さんは、ニッコリと微笑む。


 そして、恋次君の方を見る。


「お久しぶりです。

 田茂さん」


 恋次君が、深々く頭を下げる。


「恋次君。

 君が遥かを貰ってはくれないか?」


 恋次君は、その言葉を聞いても驚かない。


「それは、遥かが決めることです」


「ダメだぞ。

 恋次君、男は女を奪うくらいの度量がないと……

 ホント、最近の男の子は草食系だねぇー

 ウチの娘は、一君が恋次君に貰ってもらおうと昔から決めているんだ」


「ちょっとパパ!

 私の将来を勝手に決めないで!」


 遥ちゃんが、そう言うと清空も一緒になって言葉を放つ。


「一は、私の玩具だもん!

 誰にもあげないよーだ」


 今、玩具って単語が聞こえたのだけど……

 気のせいだよね?


「そうかい?清空ちゃんには優秀な医者を紹介するぞ?

 20代後半でイケメンな医者がいるんだ」


 田茂さんが、そう言うと清空が首を横に振る。


「私は、一のものだもーん」


「そっか、なら恋次君……」


 田茂さんは、恋次君の方を見た。


「遥の気持ち最優先でお願いします」


「それはダメだ。

 遥は男を見る目が全くないからね」


 田茂さんの言葉に恋次君が即答する。


「それには同意します」


「ちょっとどういう意味よ!」


 遥ちゃんが怒る。

 なんだろう。この感覚……

 ちょっと楽しい。

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