第24話

「そっかー。

 その女の子が誰なのかは、聞かないことにするよ」


「そうして貰えると助かる」


 恋次君が、そう言うと清空が俺の方を見る。


「でさ……一は、誰が好きなの?」


 清空の一言で、俺の胸がチクリと痛む。


「え?」


「いないの?

 好きな人」


「えっと」


 清空の問いに俺は、答えれない。

 かみさまが、彼女を用意してくれたのは、わかる。

 そして、気づいたことがある。

 かみさまが、女の子を用意してくれても俺は、その女の子のことを愛せるのだろうか?


「ねぇ、聞いてる?」


 清空が、俺に迫る。


「聞こえているよ」


「じゃ、答えて。

 一には、好きな人はいますか?」


「今は、いないよ」


 俺には、わからない。

 人を好きになると言う感情が。

 前世では、人から愛されることなんて無かった。

 もちろん両親からかもだ。

 俺は……

 いったいどうやって人を好きになればいいのだろうか……?

 好きになる前に嫌われる。

 嫌っている相手を好きになれるほど俺の肝は据わっていない。

 だから、もしもこの先かみさまが、用意してくれた女の子と出逢っても好きになれる自信がない。


「えー。

 いないの?」

 清空が、ガッカリしたトーンで肩を降ろす。


「いないよ」


「嬉しい様な悲しい様な……」


 清空が呟く。

 遥ちゃんもなんだか悲しそうだ。


「一の初恋はいつ?」


 遥ちゃんが、俺に尋ねる。


「ないよ?」


「そう……」


 遥ちゃんは、ため息をつく。



「え?何?

 何か問題でもあるの?

 みんな、初恋しているもの?」


「してるわよー?

 私なんて、年齢=彼氏いる歴だもの」


 遥ちゃんが胸を張る。


「私はずっと一、一筋」


 清空が、俺に抱き着く。

 刺されたお腹が少し痛い。


「俺もさっき言った女の子のことがずっと好きだな」


 恋次君が、照れくさそうに笑う。

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