第20話
そうすると傍観していた他の男子学生たちが、立ち上がる。
「何するんだテメェ!」
男子学生たちは、一斉に俺を囲む。
「とりあえず、女はさらえ!
男は、適当にボコっとけ!」
男子学生たちのリーダーらしき男が、指示を出す。
相手は6人……
勝てないだろうなぁ。
いじめられっこ拳法も流石に人数が多すぎる。
男子学生の1人が、俺めがけて殴りかかって来た。
俺は、それを避ける。
攻撃を避けたついでに俺は、その男子学生の腹部に一撃与える。
俺は、力はない。
だから、ダメージはそんなには与えれないだろう。
「一!」
清空との距離が放されている。
車の中に連れ込まれようとしている。
俺は、ガラの悪い男子学生たちを振り払い清空の方へと向かった。
「清空!」
俺は、リーダーらしき男の背中に蹴りを浴びせる。
「なにするんだ!
テメェ!」
リーダー格の男は、ポケットからバタフライナイフを出した。
そして、刃の部分を出し俺の腹部にそれを刺した。
意識が薄れる。
俺、死ぬのか……
なんか、前の死に方と同じじゃないか……
確か、あの時の女の子も死んだんだよね。
清空も、弄ばれたあと殺されるのかな。
哀しみ。
怒り。
虚しさ。
その全てが、俺を襲う。
不思議と恐怖は無かった。
俺は、ナイフが刺さったまま大きな声をあげた。
「清空を放せ!」
「なんだ?
テメェは!」
俺は、もう誰も死なせたくない。
俺は、もう誰も失いたくない。
助けるんだ、清空を……
俺は、全身の力を込めてリーダー格の男の顔に一撃与えようとした。
だけど当たらなかった。
からぶり。
かっこわるい……
意識が薄れ、俺はその場で倒れる。
「この死にぞこないが!」
リーダー格の男が、俺を何度も蹴る。
パトカーのサイレンが、近づいてくる。
警察、来てくれたのかな?
清空、助かるのかな?
あはは……
俺は、また死ぬのか。
刺されたお腹が痛い……
結局彼女、出来なかったな……
でも、前の人生以上に今の人生は楽しかったな……
俺は、ゆっくりと意識が消えゆく。
清空の泣き叫ぶ声と俺の名前を呼ぶ声だけが耳の中に残った。
俺は、ゆっくりと目を閉じた。
そして、再びゆっくりと目を開けると俺は、電車に乗っていた。
やっぱり、俺は死んだのか。
俺は、ぼーっと電車が止まるのを待った。
電車は、すぐに止まった。
「煉獄ー煉獄ー煉獄ー。
お降りの方はここでお降りください」
アナウンスが流れる。
俺は、静かに電車を降りた。
するとそこには、あのお爺さんが立っていた。
「一様、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
俺は、苦笑いを浮かべた。
「かみさまが、お待ちです。
こちらへどうぞ……」
俺は、お爺さんの案内でかみさまのいる場所に向かった。
「一よ。
主は何死んでいるのだ?」
かみさまの第一声はそれだった。
「死んだモンは、仕方ないです……
清空は?清空は無事ですか?」
「ああ。
無傷で済んだ。
お前が頑張ったからな」
「そうですか……
よかった」
俺が、安心するとかみさまが、静かにため息を着く。
「よくはないだろう?
主は、死んだんだぞ?」
「でも、清空が無事なんでしょ?
だったら、俺の死は無駄じゃなかった」
「余には主の考えがいまいち解らん。
主の願いも叶わず終い。
主は、まだ死ぬ時期ではないのだぞ?」
「死ぬ時期って……
今が、そうじゃないんですか?」
「主の死ぬ時期は、28歳だ。
今は、死ぬ時期ではない」
「……でも、死んじゃいました」
「うむ……
実は、余は主に一つ嘘をついた」
かみさまは、ため息交じりにそう言った。
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