第19話
「一!
私たちも帰ろう!」
清空が、そう言って俺の手を引っ張る。
そして、そう言う清空の顔が少し寂しそうだ。
「今日も夜は1人なの?」
俺は、さりげなく清空に尋ねてみる。
「うん。
お母さんこの時期、仕事が忙しいから……」
「そっか……」
「うん……」
なんて言うか……
清空の顔が、ものすごく寂しそうだ。
昔は、ひとりになるのが嫌で良く泣いていたっけ……
「ウチでご飯でも食っていく?」
「え?」
俺は、さりげなく清空に聞いてみた。
清空は、目を丸くして驚いている。
「今日、俺も1人なんだ」
「そうなんだ……?」
「うん。
母さんは、パートで父さんは、飲み会で遅いんだ」
俺が、そう言うと清空の顔が赤くなる。
「一、誘ってくれてる?」
「ああ。
ご飯にね……」
「私も食べる?」
「食べない」
清空は、何を突然言い出すんだ。
「食べてもいいんだよ?」
「煮られるのがいいか?
焼かれるのがいいか?
好きな方を選んでいいよ?」
「じゃ、煮られる!
一緒にお風呂に入ろう!」
「えっと……」
「一が言ったんだからね?」
「……お風呂くらい1人で入りなさい」
「ケチー」
清空は、頬を丸くさせて怒ったふりをする。
それが、何処か可愛かった。
「さぁ、帰ろう。
そして、ケンタッキーでもデリバしよう」
俺が、そう言うと清空が目を丸くさせる。
「え?高くつくよ?」
「え?だって、俺、料理とか出来ないし……」
「私が作るよ」
清空が、そう言って笑う。
「料理できるの?」
「その辺の人妻程度の料理ならできるよ」
人妻って……
誰に対抗しているのだろう。
「そうなの?」
「うん!
チキンが食べたいんだよね?
私が作ってあげる!
流石にケンタッキーの味は出せないけど……」
「楽しみにしてるよ」
清空は、料理が作れるのか。
そう言えば、女手一つで育っているから、炊事洗濯などの手伝いとかしていたんだろうな。
「そうと決まったら、スーパーに行こう!」
「うん」
俺たちは、スーパーに向かった。
するとスーパーの前にガラの悪そうな男子学生たちが、集まっていた。
俺たちは、出来るだけ目を合わさないようにスーパーに入った。
そして、鶏肉とから揚げの元などの材料を買うとスーパーを出ようとした。
ガラの悪そうな男子学生たちは、まだそこに居た。
するとその中の1人が、声をあげる。
「おい、見てみろよ。
あの女、結構イケてね?」
そう言って清空の方を見る。
「マジかわいいな」
そう言って清空の手を掴む。
「離してください」
俺は、少し震えながら言った。
「はあ?
お前、この子のなんなんさ?」
「もしかして彼氏?
こんなダサイの放っておいて俺らと気持ちいいことしようぜ?」
別の男子学生が、清空の腕を掴む。
「一は、ダサくないもん!」
清空は、そう言ってその男子学生の足を思いっきり踏んだ。
「痛てぇな!
お前は、大人しくしていればいいんだよ!」
足を踏まれた男子学生が、清空の頭を掴む。
何となく気に食わない。
何となく腹が立つ。
だから、ダメだと思っていても俺はやってしまった。
清空の頭を掴んでいる男子生徒の顔に一撃パンチを喰らわせてしまった。
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