第16話

 俺が動けずにいると遥ちゃんが、俺の唇に指を軽く当てる。


「さぁ、選ぶのよ。

 私か清空ちゃんか……」


「選べない」


 もちろん優柔不断な答えだと思っている。

 だけど、俺は選べない。


「どうして選べないのかしら?」


「だって、2人とも俺に恋愛感情はないでしょ?」


 そう、俺は愛されない運命を背負っているんだとかみさまに教えられた。

 そんな俺にこんな状態が来るなんて考えれない。

 バカな回答だと思われても仕方がない。


「私は、一のこと好きだよ?」


 清空が、そう言って俺の目をじっと見る。


「えっとその好きじゃなく……」


 俺は戸惑う。

 清空の好きがどの好きなのか、わからない。

 恋愛?それとも友人?それとも愛?

 愛ってそもそもなんだ?


「一、女の子にここまで言わせておいてそう言う対応はいかがなモノかしら?」


 遥ちゃんが、俺の方を睨む。


「そんなこと言われても……」


 俺は言い訳をする。

 何に言い訳をしているのだろう。


「じゃ、どんな言葉が欲しい?」


 遥ちゃんの言うとおりだ。

 俺は、どんな言葉が欲しい?

 どんな言葉を言われれば満足する?

 いや、俺だけが満足するんじゃダメなんだ。

 それじゃ、恋愛にはならない。

 恋愛って、お互いが満足しあえるモノじゃないとダメなんだ。


「遥ちゃん、一をいじめないであげて」


 清空が、うつむいている。


「いじめているわけじゃないわよ……」


 遥ちゃんが、そう言って清空の頭を撫でる。


「そうだけどそうじゃないよ」


 清空が、肩を震わせる。

 泣いているのかな……

 俺は、清空の顔を覗き込もうとした。

 すると……


「てい!」


 遥ちゃんに、頭をチョップされた。


「痛いな……

 何するの……?」


「それは、こっちのセリフ……

 女の子が泣いているのに覗き込むって行動が信じれない」


「え……

 そんなもん?」


「『そんなもん』って、アナタ……」


 遥ちゃんがため息をつく。


「なにかまずい??」


「頭痛くなってきた……」


 遥ちゃんが頭を押さえる。

 俺は、何かおかしなことを言ったのだろうか?

 すると今度は突然、清空が笑いだす。


「え?なんで??

 今度は、なんで笑ってるの??」


「だって、一だなって思って」


 清空が、涙を拭きながら笑う。

 すると遥ちゃんも笑いだす。


「そうね。

 これが、一よね」


「うん。

 私は、一のこういうところが好きなんだ」


「そっか……」


 遥ちゃんが、頷く。


「遥ちゃんは、一のどこが好きなの?」


 清空が、そんなことを聞く。


「そうねー。

 こうやってバカが、出来るところかなぁー。

 恋次は、硬いし。

 他の男は下心しかないし……

 なんだかなぁーって感じなのよ」


「そっかー。

 そうだよねー。

 私も一には、気楽に構えれる。

 昔は一緒にお風呂とかにも入ってたんだよー」


 清空が嬉しそうに笑う。


「へぇー。

 じゃ、今度3人で入ってみる?」


 遥ちゃんが、またおかしなことを言う。


「いいね!」


 清空が同意する。


「えっと、俺の意向は、関係なし?」


「一に選択権があると思って?」


 遥ちゃんが、そう言ってニッコリと笑う。

 この笑顔。

 怖いです。

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