第10話
それから何度かの4月を迎え……
俺たちは高校生になっていた。
お嬢様の遥ちゃんも俺たちと同じ公立の学校に入学したのには驚いたけど、俺と清空、遥ちゃんと恋次君。
みんな、同じ学校に入った。
「一は、どこのクラブに入るか決めた?」
清空の方は、相変わらず俺を後ろから抱きしめ耳元で話す。
俺の方は、何度もされているのに慣れることができずいつも胸の鼓動が早くなる。
「帰宅部に入ろうかなと思っているんだ」
「それ、クラブじゃないよ?」
清空は、そう言って笑う。
「清空は、何部に入るの?」
「空手部!」
「へ?」
「空手部に入って一のことをずっと護れるくらい強くなるから!」
清空が、耳元でクスクスと笑う。
そのたびに耳元がくすぐったい。
清空が、頭を動かすたびに清空の額の傷がチラつく。
「傷……なかなか消えないね……」
俺は、ボソリと呟く。
「うん……
この傷は、一生消えないかもね……」
「ごめん……」
「どうして、一が謝るの?」
「だって、俺のせいじゃないか……
俺を護るために……」
「はい、そこまで!」
清空は、そう言って俺の唇に両手を当てる。
「でも、将来お嫁さんになるとき……」
俺は、清空の指先を話してそこまで言ったとき清空が、悲しそうな表情を見せた。
だから、俺は言葉を続けるのをやめた。
清空が、小さな声で言った。
「貰ってくれないんだ……」
俺の耳にはそう聞こえた。
だけど、確かにそう聞こえた訳じゃない。
「うん?」
俺は、もう一度聞き返そうとした。
「なんでもないよーだ!」
清空は、そう言って俺から離れると走り出す。
「気になるじゃないか!
言ってよ!」
「早くしないと授業が、始まるよー」
清空は、笑っていながら学校の中に入った。
俺は、清空を追いかけた。
教室に入ると男子に囲まれた遥ちゃんと、教室の隅でつまらなそうに校庭を眺めている恋次君がいた。
恋次君と目が合う。
「恋次君、おはよう」
俺が、挨拶するとすぐに清空が挨拶をする。
「恋次君おはよー」
すると恋次君が、苦笑いを浮かべ挨拶する。
「ああ。
一に清空もおはよう」
「もしかして、元気ない?」
清空が、ズバッと恋次君に尋ねる。
すると紙袋を机の上に置きその中には、大量の手紙が入っていた。
「なにこれ?」
俺は、思わず尋ねてしまった。
「ラブレター……
今、読んでいるんだが……
今日中に全部読めるか、不安だ……」
恋次君が、そう言ってため息をついた。
「えー。
全部読んでいるの?」
俺は、思わず声を出してしまった。
「まぁ、書いてくれた人への誠意だ……
返事も書こうと思うのだが、今週中に書けるか心配になってきた……」
マメだな。
これが、モテる男の秘訣なのかな?
「あはは……
頑張って」
俺は、少し羨ましいと思ったけど、こんなにモテたいとは思わないかな……
「何を言っている?
一、お前も書くんだぞ?」
「え?」
「俺1人で、この作業をしろと言うのか?」
恋次君、疲れてるのかな……?
「さっき誠意がどうとか言ってなかった?」
「大丈夫だ。
俺の幼馴染であるお前が返事を書くのなら彼女たちなら納得してくれるだろう」
「それは、どうかな?
それをしたら俺の評判が、がくーーーっと落ちる気がする。
それに、女の子たちは恋次君に読んで、そして返事を返してほしいんだと思う」
「そうか、言われてみればそうだな。
聞かなかったことにしてくれ……」
「……うん」
まぁ、こんな感じでモテモテの恋次と美少女でお金持ちの遥ちゃんとの学校生活が始まったのだ。
あとついでに清空ともの……
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