第11話
「一くーん」
ある日の朝。
俺は教室で机を枕にしてうたた寝していると女の子が俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「おい。
お前にも来たんじゃないか?」
俺の後ろに座っていた恋次君が、俺の背中をつつく。
「ふぇぇ?」
俺は、情けない声を出しながら体を起こす。
「一くーん♪」
女の子の声が黄色い。
「さぁ、早く行ってやれ」
恋次君の顔が、物凄く嬉しそうだ。
「う、うん」
清空の顔が、どこか不機嫌。
そして、遥ちゃんまで俺を睨んでいる。
俺は、痛い2つの視線を背中に俺の名前を呼んだ女の子の方に向かった。
「一君、あのね……」
女の子が、モジモジしながら俺に手紙を渡す。
「え?」
これ、もしかして俺にかな?
かみさまが用意した女の子ってこの子なのかな?
顔がとても可愛いし優しそうだし……
物凄くタイプなんだけど……
「あのね」
「うん」
「これ、恋次君に渡してください!」
「え?」
「お願いします!」
女の子は、俺に強引に手紙を握らせると小走りで廊下を走ってどこかへ消えた。
「よ、色男!」
クラスメイトの1人が、俺を茶化す。
「残念だったな!
これは、恋次君のモノだ!」
俺は、大きな声で言ってやった。
「なんだ、また恋次か……」
クラスメイトのがっかりした声が、耳に入る。
恋次君の顔が真っ青になっている。
「どうしたの?」
「こないだのラブレターの返事をやっと全部返せたところなのに……」
恋次君が、疲れ果てた顔をしている。
「勘違い君には、寂しい結果になったね」
清空は、物凄く嬉しそうな顔でそう言った。
「なんで、そんなに嬉しそうなの?」
俺は、清空に尋ねた。
「だって、だってなんだもん」
清空は、小さく笑うと俺に抱き付いてきた。
「相変わらずお熱いわね」
遥ちゃんが、ため息交じりに言った。
「遥ちゃんになら、一をレンタルさせてあげるよー。
2泊3日100円でどう?」
清空の目が、ドルマークになる。
実際にはなっていないけれど、そんな感じだ……
清空の家は、母子家庭。
父親は、酒癖が悪く、俺たちの物心つく頃には、すでに清空の両親は離婚していた。
だからか、俺は清空の父親の顔を知らない。
清空は、空手をしつつ清空の祖父母が経営している喫茶店で手伝いをしている。
立派な子なんだけど……何かにつけてお金儲けの考えに走るのはよくない。
「俺は、レンタルビデオか?」
「うーん」
清空は、首を傾げ、うーんと考えた後、ニッコリと笑った。
「一のレンタル、はじめました」
清空の目がキラキラ輝く。
「じゃ、今度、借りようかしら?」
「遥ちゃんまで、何を言ってるの?」
「だって、安いじゃない?
72時間で、100円でしょ?」
「そうだね。
安いね。じゃ、1日100円でいいよー」
「買った!」
「俺、もしかして買われた?」
俺は、恋次君に助けを求めようと恋次君の方を見た。
「奴隷契約成立だな」
恋次君は、ニッコリと笑っている。
あれ?もしかして、ラブレターのことを根に持ってる?
「なに奴隷がいいかしら?」
遥ちゃんが、俺の顎に手を当てる。
「え?」
「肉奴隷とかでもいいかしら?」
「にくどれい?」
あれですか?
アダルトゲームやアダルトビデオに出てくる肉奴隷ですか?
俺の顔が、真っ赤になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます