第8話

 入学式が終わり次の日がやってくる。

 俺はこの朝が憂鬱で仕方がない。

 だって、これからあるのは、差別とイジメ……

 そんな毎日が繰り返されるのだろう。

 前世でもそうだったから……

 現世でも変わらないと思う。

 でも、行かなくちゃな……

 母さんを悲しませたくない。

 俺は、母さんに手を引かれ幼稚園バスを待つ。

 バスを待っていると、駆け足でこちらに向かってくる子がいた。

 清空だ……

 清空は、俺に飛びつくと俺の名前を呼び続ける。


「一!一!一!」


 かみさま、用意してくれるのならもっと大人しい子がよかった。


「は、離れろよ……

 恥ずかしいじゃないか……」


「私は、恥ずかしくないもん!」


 清空が、とびっきりの笑顔で答える。


「いや、俺が恥ずかしいんだってば……」


「小さいこと気にするな!

 キスするぞ!」


 清空が、恥ずかしげもなく言い放つ。

 すると清空のお母さんである未来さんが、嬉しそうに笑う。


「あらまぁ……

 キスなんて言葉、どこで覚えたのかしら」


 すると母さんが、しゃがんで清空の視線に合わせる。


「清空ちゃん。

 キスは、大事な人の為にとっておかないとダメよ?」


「一が、私の大事な人だもん!」


 清空が、そう言って俺の体を力強く抱きしめる。

 俺への扱いは、まるでそうだな……

 ぬいぐるみだ。

 まさにぬいぐるみ扱いだ。


「えっと……」


 困っていると清空が俺の目をじっと見る。

 これって、まさか……

 清空の口が、俺の口に近づく。

 俺の唇と清空の唇が近づこうとしたとき、別の女の子の手が優しく俺の口をふさぐ。


「キス防止~~」


 この声は、遥ちゃんの声だな。

 俺は、ゆっくりと振り返ると、遥ちゃんが、ニッコリとほほ笑んでいた。


「あー!

 遥ちゃん!

 どうして邪魔するの?」


 清空が、大きな声でそういうと遥ちゃんが澄ました顔で答える。


「一君の純情は、わ・た・し・の・も・の♪」


「えー!

 一は、私のモノだよ!」


「何言ってるの?

 世界中の男は私のモノよ?」


 遥ちゃんが、そう言って胸を張る。

 すると後ろからやってきた恋次君が、遥ちゃんの頭にチョップした。


「何するのよ!

 女に暴力をふるうなんて男の風上にも置けないわよ!?」


 遥ちゃんが、恋次君に怒鳴る。


「俺は、お前のモノにはならない」


「アンタなんか要らないわよ!


 アンタは、私のいうことを聞かない!

 でも一は、私の言うことなんでも聞いてくれそうだもん!」


「え?」


 俺は、思わず声をあげてしまう。


「一って頼まれると断れないタイプでしょ?」


 遥ちゃんが、そう言うと清空が即答する。


「えー。一そうなの?」


「えっと。

 どうなんだろうね……」


「じゃ、私とキスして!」


「えー」


「キス!キス!キス!」


 清空が、そう言って何度も連呼する。

 さて、弱ったな。

 子供とはいえ、ここでキスするのはどんなモノなのだろうか……?

 もしかして、恋愛は子供の時の間だけできるのか?

 すると幼稚園バスが来た。


「あー。

 バス来ちゃった……」


 清空が、残念そうにため息をついた。

 俺は、内心助かったと思った。

 そして幼稚園に到着すると授業が、始まった。

 授業が、始まるるとすぐにクラスメイトが、俺の体を蹴りだした。


「痛い……」


 何するんだ?

 いきなり……


「お前、化け物なんだろ?

 化け物なんだから、幼稚園に来るなよ!」


 男の子が、そう言って積み木を俺の体にぶつける。

 なんかムカつくな……

 28年間いじめられてきた、イジメられっ子拳法で退治してやろうか……?

 4年間のブランクあるけれど……

 俺は、構えた。

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