第6話
幼稚園に着くと女の子が体当たりのように俺の背中に飛びつく。
「一!」
痛い……
女の子は、俺の体に抱きしめると俺の名前を何度も呼び続ける。
この女の子の名前は、詩空 清空。
ちなみに“せいくう”と呼んだら怒られる。
正しい読みは、“きよら”
清空と書いて”きよら”
本人は、大変気に入っている名前だ。
「清空、痛いって……」
「男の子でしょ!
これくらい我慢しなさい!」
清空は、そう言って俺の頭を撫でる。
かみさまが、言っていた運命の恋人って清空じゃないよね?
出来れば、もうちょっと大人な性格の子が良かったかな……
と思ったけど、よく考えれば俺も子供だ。
俺は、清空に手を引かれ、そのまま幼稚園の教室に入った。
すると幼稚園児にしては色気のある女の子がいた。
色気じゃないな、フェロモンと言うか雰囲気と言うか……
まるで大和撫子。
物凄く美人だ……幼稚園児の視点から見れば……
だけど。
そう思うのは、俺だけじゃなかったみたいだ。
その女の子の周りには、数人の男子が居た。
「あー!
一!私以外の女の子のことを見ちゃダメ!!」
清空が、俺の目を隠す。
見ないよ、どちみち俺みたいなの相手にされないし……
「清空!
前が見えないじゃないか!」
「私以外の女の子見ない?」
「それは、難しいよ。
クラスの半分が女の子だし……」
俺が、そう言うと清空が頬を膨らませる。
「ぶー!」
俺たちのやりとりを見て、その女の子が近づいてくる。
「あら、あなたの目の周りや首の周りにある痣……」
女の子が、そこまで言うと清空が、その女の子のことを睨む。
俺は、前世もこの痣の事がコンプレックスだった。
まさか、現世でもこの痣があるなんて思わなかったけど……
そう言えば、かみさまが言っていたな。
俺が、“輪廻転生未来永劫独り身”って……
この痣があるのが、原因なのかな……
男の子が、俺の方に指を向けてケラケラ笑う。
「コイツ、怪人みたいだー
やっつけろー」
その男の子が俺を殴ろうとした時、清空がその子を睨む。
そして清空がその男の子たちに殴りかかろうとしたとき色気のある女の子がその男の子の体をつつく。
「こういうの、個性っていうのよ……
この子をイジメたらダメ!」
「えー!
お前、怪人の味方するのか!?」
男の子が、そう言ってその女の子の体を突き飛ばす。
すると後ろから色黒の男の子が、その男の子を突き飛ばした。
「え?」
清空が、目を丸くさせている。
俺も驚いている。
「痛いな!
何するんだよ!」
「遥に手を出すヤツは、俺が許さない」
男の子は、そう言って遥と呼ばれる女の子の手を引っ張る。
「恋次のバカ!
私の彼氏を殴っちゃダメじゃない!」
「こんな差別野郎が遥の理想のタイプの男なのか?」
「う……」
遥ちゃんは、黙り込む。
「わかった!
じゃ、アンタ、私の彼氏クビね!」
突き飛ばされた男の子は突然のことに目を丸くさせる。
「そんなー」
突き飛ばされた男の子は、涙目で自分を突き飛ばした男の子を睨む。
しかし、恋次って子の方がさらに怖い顔で睨んだので、泣きながらその場を去った。
遥ちゃんは、俺の方を見てニッコリと笑う。
「素敵な痣ね……
私の名前は、春雨 遥。
んで、こっちが……」
「黄昏 恋次だ……」
「たそがれ……れんじ?」
清空が、首をかしげる。
「そうだ……
で、お前らの名前は?」
「あ、俺、斎藤 一って言います」
「私、春雨 清空!」
清空は、ニッコリと笑うと俺の体に抱き着く。
「一はね、私と結婚するんだよー」
「へぇー。
じゃ、私もパンダ君を狙っちゃおうかしら……」
遥ちゃんが、ニッコリと笑うと俺の体に抱き着く。
「あー。
ダメだよー。
一は、私のー」
「こういう大人しい子は、浮気しないからいいのよねー」
かみさま。
もしかして、モテ期ってヤツですか?
モテ期……今、来ても無意味じゃないですか?
俺は、悲しい目で恋次君の方を見た。
「恋次君助けて……」
「断る。
モテることはいいことだぞ」
恋次君は、大人だな……
こうして、俺たちは出逢った。
俺たち4人の出会いは、このながーい物語の一歩にしか過ぎない。
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