第4話
暫くお爺さんに案内されるまま歩いた。
すると煉獄役所と札が貼られてる建物の前に立った。
「ここでございます」
「なんか市役所みたいな建物ですね」
「一様の世界でいいますと……
まぁ、市役所みたいな感じでございますので間違ってはいません」
「そうなのですか」
「では、中へ入りましょう」
お爺さんに連れられそのまま役所の中に入った。
案内された部屋には、俺と同じ年くらいの男の人がいた。
「かみさま。
この方が、斎藤 一様でございます」
「うむ。
一だな。話は聞いているぞ」
俺のどんな話を聞いたのだろう……?
俺が、そう思うとかみさまが笑う。
「女を通り魔から救うために死んだそうだな?
この間抜けめ!」
「え?」
俺は、一瞬耳を疑った。
「挙句、その女の子も殺された……」
「あの子……
殺されたのですか……?」
俺は、結局何も守れなかったのか……
「まぁ、人助けをしたことはいいことだ。
なので、お主の願いをひとつだけ叶えてやろう」
「願い事ですか?」
なんだろう。
いきなり言われてもわからないな。
「何でもいいのだぞ?
女が欲しいとか金が欲しいとか美味いモノを食べたいとか、色々あるだろう?」
「そうですね……」
欲しいモノか……
「なんでも好きなものを言うがよい」
「それって、モノじゃなくちゃダメなんですか?」
「むむ?
そう言えば主は、病気持ちだったな。
健康な体とかが、望みか?」
「いえ……
一度でいいから、女の子と手つなぎデートと言うモノをやってみたいです」
我ながら恥ずかしい願いだと思う。
でも、ずっと憧れたことだったんだ……
俺は、目を閉じ目の前でいちゃつくカップルをうらやましく思ったのを思い出す。
いちゃついたカップル……
それは、俺が大好きだった女の子だった。
あの時は、ショックだったな……
「そんなことでいいのか?」
かみさまが、目を丸くさせて驚く。
「はい。
俺にしてみれば、手つなぎデートなんて逆立ちしても出来ないものですよ……」
俺は、苦笑いを浮かべて答えるとかみさまは、真面目な顔で答える。
「逆立ちしていたら、手をつなぐことなどできないではないのか?」
するとお爺さんが、答える。
「かみさま。
この場合の『逆立ちしてもできない』と言うのは、『どんなに頑張ってもできない』と言う意味でございます」
「うむ……
人間とは摩訶不思議な発想をするのだな。
逆立ちしてもと言うが、逆立ちしたほうが出来ないことが多いと思うぞ」
「そうでございますが……
『考え方を変えても……』と言う意味でもございます」
「うむ……」
かみさまは、納得がいかない顔のまま俺の方を見る。
そして、言葉を続ける。
「それでは、我がつまらぬ」
「え?」
俺は、思わず声をあげてしまった。
「来世でも主は、モテないだろう。
と言うか前世も来世も、人から愛されることはない運命だ」
そうだったのか??
言われてみれば俺の人生異性から嫌われまくってたな。
神様は、さらに言葉を続ける。
「そんな主が、手を繋いでデートしたいと……?」
「はい」
「どうせなら、もっとその先のことを願ってもいいのだぞ?」
「先の事といいますと?」
「大人なのだからわかるだろう?」
つまり、アレか……
夜の営みと言われるヤツか……
確かに憧れるけれど……
「そこまでは、望めません。
俺みたいなヤツに恋人なんてできるはずもないですし……」
「そうだな」
かみさまは、あっさりと肯定した。
なんか傷つく。
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