救えない心と降り続ける赤


「恋は甘くて苦い、例えるならそう、ココア・・・のような味だと僕は思う訳だよ」


 雪が降る今日、僕は告白しようか悩んでいる。

 シチュエーションとしては悪くない。

 いや、これでイルミネーションとかがあれば尚よしだ。


「それをなんで俺に言うわけ? なに、好きな人にコクろうとか考えてるのか?」

「そうだよ、よくわかったな。流石、親友」


 僕の名前は天城あまきそら

 天天とおかしいような気がしないでもないが僕は気に入っている。


 そして、親友の宮代みやしろ海人かいと

 サッカー部のエースにして、イケメンでクラスの人気者。

 否、クラスだけじゃなくて、学年、学校の人気者だ。


「それで誰なんだ?」

「誰って?」

「そりゃ好きな人だよ。みやこか? さくらか?」


 海人が言った2人も人気だ、特に男子から。

 可愛く元気で人気になる理由は色々だ。

 でも、僕の好きな人は違う。

 気がついている人がいるかもしれないが、


「天、天。またボーッとしてた」

「海人くん」

「んで、好きな人って誰だよ。教えてくれよ、親友だろ?」


 そう言われても教えられる訳ない。

 だって、だって僕の好きな人は海人くん






















 と、付き合ってる神崎かんざき|ひより、なんだから。

 告白しても答えは絶対Noになるだろうけど、思いを伝えたい。


「何が恋は甘くて苦い例えるならそう、ココア・・・のような味だよ。苦いだけのビターチョコレートじゃん」


 僕はそんな独り言をもらす。


「恋は苦いよ」

「それは海人の恋は叶ってるからそう思えるだけでしょ……って苦いの?」

「ん? あぁ……苦いよ、苦い。苦くて嫌になるよ」


 海人がそう言うなんてひより・・・と何があったのかな?

 あんなにラブラブだと思っていたのに。


「そうだ、俺は今日ちょっと部活で忙しいから先に帰っててよ」

「うん、わかった」


 早速チャンスが訪れた。

 今日は運がついてるのかな?

 そう言えば朝の占いで牡羊座の運勢が1位だったよな。

 「何事も攻めれば上手くいく」って言ってたし、告白してみよう!



 ※



 と、思っていた時期も僕にはありました。

 ありましたよ、ありましたけど夜も暗く、遅い時間になってしまった。

 そして、結局会えず仕舞い。


「どうしてこんな所に来たんだろう」


 雪も強くなりつつある。

 そんな駅前のイルミネーションがキラキラと輝く街並み。

 雪が光に当たり赤や黄色、青などに見えてとてもオシャレだ。

 告白するにはとてもいいシチュエーションだと思う。


「もっと僕に自信があれば、あればいいのに」


 フラフラと歩いて着いたのは「恋愛スポット」と呼ばれるやつだ。

 『この扉を抜けて最初に会った人が貴方の運命の人です』と吟っている。


「新しい恋が見つかれば」


 扉を開けると……そこに立っていたのは、


「あっ、天くん」

「ひより、ちゃん?」


 なんでひよりがこんな所にいるんだろう?

 かっこよくて、人気者の彼氏がいると言うのに。

 それに、今日のひよりは何かがおかしい、なにかわからないけど


「凄いね! ここって願いが叶うんだ」

「えっ!」

「ううん。私ね、昨日、海人と別れたの」

「海人と? なんでまた」

「だって、利用してたのがバレちゃったから」

「利用、してた? って海人をか?」


 僕にはひよりの言っている事が理解出来ない。


「そうだよ。私はね、好きな人と結ばれたいが為に利用してたの」

「それって、誰?」


 いや、薄々気がついている。

 自意識過剰かもしれないが気がついている。


「天くんって暇?」

「暇、だけど」

「じゃあついてきてよ。私の家まで」


 ついていくべきではない。

 心の中でそう警報が鳴り響くが、ひよりの顔を見ていると、それはとてもどうでもいい事に思えてくる。


「ほら、行くよ」


 僕はひよりに引かれて歩き始める。

 そのまま僕は思考が止まったかと思うくらい何も考えられず、ただただひよりに引かれていく。


―――ブブブ ブブブ ブブブ


 僕のスマホが鳴っている。

 ひよりに止まってもらい確認すると海人からの電話だ。


「うーん。うるさいね」


 そう言ってからひよりは僕のスマホの電源を落とす。


「あの、ひよりちゃん?」

「どうしたの? 天くん、気にしないでいいんだよ。ほら」


 また、ひよりに引かれて歩き始める。

 雪の降る道を、イルミネーションが輝く道を僕はひよりに引かれながら歩いていく。



 ※



「ついたよ。入ろ?」


 入っちゃダメだ。

 それはわかっている。

 入ったら僕は戻れなくなってしまう。

 でも、体は言う事を聞いてくれない。


「こっち」


 僕はどんどんと暗い暗い部屋に。

 ひよりの部屋に連れてこられた。


 そこは地獄と表現しよう。

 僕にとっては地獄以外の何物でもない。


「これ、は?」

「好きだよ、天くん。これからずーっと、ずーっと一緒にいようね?」


 お腹の辺りがいように熱を帯び始めて、


「痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

「ほら、静かにしよ」


 次は背中の辺りが痛い、熱い、痛い、痛い。

 声を出そうとしてももう出ない。


 もう、意識が、


「これからはずっと一緒だよ」


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