第3話 わし座

 僕は彼女が好きだったのだ。





 見えない目で、ドームに映る星を見ていた。


 癌で蝕む身体を引きずって、ここに来ていた。




 頭が痛かった。










 でも彼女の声は、心地よくて、本当に星が見えた。



 彼女がプラネタリウムの解説員になって数日後、いつもと違う解説が聞こえてきて、何か変えたんだなってぐらいにしか思わなかった。







「−–−–そして、こちらがこと座です」






 涙が出てきた。




 本当に見えたのだ。


 輝く夏の大三角が。

 羽ばたくはくちょう座が。

 燃えるさそり座が。






 お礼を言いたかった。

















「…先生、本当にダメなんですか」


「末期癌だし、第一体力が持つかどうか…」


「先生、お願いします」


「外出したとしても、いつ症状が悪化するか分からないんですよ」


「それでもいいです」


「……」

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