第21話 オネエ道への勧誘はキッパリお断りします

 着衣はすれども、マッチョなポージングをした警備員らしき2人にティアは。


「今直ぐその格好を止めないなら、貴方達が好きあっているって噂を流しますよ」


 ガッ!

 シャキーン!

 ペコッ!


『大変失礼しました!!』


 警備員の2人は踵を合わせて直立すると、直角まで頭を下げて謝罪した。


「頭を上げて頂いてよろしいですから、誰か職員の方を及びください」

「はいっ、ただいま!」

「ご案内させて頂きます、こちらへどうぞ」


 事前に役割分担が決まっているのか、ティアの言葉に流れるように対応する警備員ズ。

 仕事に趣味かプライベートかライバル心を持ち込んだから、むさ苦しいポージングを見せるから仕返しをされそうになったのだ。


 ちなみに俺はあんなポージングをしない。

 すればキャー可愛いとか言って、ティアに抱き着かれるのは目に見えてるからな。

 俺は将来、ダンディなジェントルメンを目指すんだからな。

 真逆の女装の似合う美少年とかには、絶対にならないからな!


 奴隷と対面すると思うと気分が暗くなりそうだが、アホな事を考えて誤魔化す。

 奴隷って、イジメを社会的に行う超強力版なんだよな。

 家畜か使い捨ての道具扱い、か……

 ままならないねえー………………


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 まあ実際に職員と話しをしてみて、働いている奴隷と呼ばれた彼等を見てみて、その印象はガラリとかわった。


 犯罪者の矯正は屈強なオネエ達による、人生観の書き換えで。

 借金返済の人達は住み込みの派遣社員だった。

 理解はしたけど理性が記憶するのを拒んでいる感あるよね。

 なんだよ、人類みな兄弟みたいな言い方で、犯罪奴隷みなオネエって、なんなんだよ!!


 職員に案内されて契約する奴隷達を見てみれば、薄暗く汚い牢屋に閉じ込められているかと思っていたのに、この世界での平均的な相部屋で生活していたのだ。


 張り詰めていた気もたるんたるんに緩み、死んだ魚の目みたいになってスカウトする対象を探していたよ。

 そうすると大体オネエ達が、キャッとか、ヒッとか悲鳴を上げるんだよ。

 どうやら心まで乙女になってしまっているらしい。

 彼等の状況も確認出来たので、再び応接室まで戻る。


「思いやりのある女性を中心に、家事能力の高い者、オシャレに興味のある者を半々で10名ほど雇いたいと思います」


 そう言ってティアは応接室のテーブルに、日本のシャレオツな服と、一口サイズのボール状のスイーツを皿で出した。


「店ではこのような衣服を中心に販売し、家事に従事する者には菓子の作り方を教えます。彼女達に服を見せて、菓子を食べさせて希望者を募ってください。職員さんの候補を入れて貰っても構いません」


「かしこまりました。しばらくお待ちください」


 そう言って、夜会の時に着るようなドレス姿の屈強なオネエ職員が去っていった。

 彼等に差別も偏見はないが、逆に関わりたいとも思わないんでな、他所でやってくれと願うのは俺だけじゃないだろう。

 友人としてなら問題ないが、そっちの道に誘われたからなー……

 あら、可愛い坊やだこと、アナタ女の子になってみない? じゃねえよ!!

 いかん、あの職員が来てから思考が無茶苦茶で千千に乱れている。


 コンコン。


「どうぞ」


 俺が錯乱していると、いつの間にかティアがノックに返事をしていた。


「失礼します」


 入って来たのは借金社員(奴隷って言いたくない)らしき女性達と、残りの一部はオネエ達だった。

 俺をその道に誘わないなら、従業員に雇いますよ?


 こうして、俺の心の中で紆余曲折あったものの、従業員募集の面接が始まったのだった。

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