第19話 一緒に帰って来た少女は別の意味でガチだった

「どうしてくれるのよ!? 私のショタ天国を返して!!」


 訂正。

 俺は泣いてないし、泣いた少女は喜びじゃなくて嘆きだった。


「今は時間がないからよく聞け。俺は日本人の転生者で、日本で24時間したらさっきまで居た世界に戻される。1回だけの、そういう能力なんだよ。お前がどの時代の人間か知らないが、少なくとも日本でしか買えない物もあったはずだ。これはチャンスだと思って、勝手に行動しろ」

「えっ、それホント? やったー!!」


 面倒くそうなので適当にフカシこいて、ティアに抱っこされて逃走した。


「クスクス。アキラさん、嘘も誤魔化しもしないんじゃ?」

「だったらティアは、新婚旅行を邪魔されても良かったのか?」


「新……愛は何よりも優先されますからね。1日経ったら、私が送還しておきます」

「ありがとうティア。愛してるよ」

「私もです」


 ティアは俺を抱きかかえて移動する。

 コンビニには代わらず新聞が売られており、日付を見ると、あれから130年も経過していた。

 持ち帰った異世界の物資はないので、政府に報告はしない。

 代わりに日本に残してあるティアの分身体から、カードを受け取った。

 俺の実家で。


 いやいや、泣いてないよ?

 ちょっと昼食の塩分と水分が多かったんじゃないかな?

 それが溢れてきただけだよ。

 両親の墓参りもした。

 普通の墓だったけど、とても丁寧に掃除されていてひとつも汚れていなかった。

 また水分が溢れてきた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ティアの分身体は1度ティアへと戻り、記憶を統合してからまた出てきた。


「これからは常に受信状態になりましたので、毎晩アキラさんとの記憶を受け取れますね」


 彼女の為にも、もっとイチャイチャしないとな!


 ティアの分身体は日本で自社の筆頭株主をしながら、俺の実家と墓守をして暮らしている。

 創造神の上の存在の残滓の分身体。

 映画やアニメの超人よりも高性能だろうし、平穏な暮らしを満喫しているらしい。


 俺が求めた物資も、買いに行かずして実家に搬送されてきた。

 それも全てティアが収納したので、俺が帰って来たのはティアの優しさだったんだなと、この時に気付いた。


 肉食大和撫子、マジ良妻!!


 ただ分身体と前後から抱きしめて、2人で両耳を舐めるのは止めて!


 良妻大和撫子、マジ肉食!!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 実家で1泊してから、またファンタジー世界に転移する時間になった。

 クレジットカードは耳舐めの前に、わすれずに返してある。

 分身体は、俺とのスキンシップは不要らしいが、チャンスがあったのでやってみたそうだ。

 高位存在の記憶なので、試してみた実体験と記憶の反芻は変わらなかったそうだ。

 これで実家に帰る度に、スキンシップされる事はなくなった。


 楽しかった帰省も、もう終わりだ。

「さあ、帰ろうか。ビア樽王国に!」

「ツイダル王国ですよ」

「……」


 耳舐めされた時並に恥ずかしかった。

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