第17話 交渉は相手が泣いてからが本番なんだけどな

 候補の店は街の大通りから、ひとつ奥に入った通りにあった。


「こちらの建物と左、奥、左奥のみっつの空き地も、同一名義での購入が可能です」

「よく、こんなにいい立地なのに、空き地と空き家のままになってますね」


「空き地のままでは利益になりませんが、今回のように広い土地を求める方も稀にみえますので。そのような場合の為にわざと残してあるのです」


 なるほどねー。

 土地は一画?25×25メートルが2×2の4面。

 全部買うなら50×50メートルの土地になる。

 思いつきでティアに耳打ちする。


「全部買って店は潰してさ、デカイ店舗に倉庫と社員寮も建てねえか?」

「面白そうですね、やりましょうか」


 ひぅっ! くすぐったいって!

 ティアもささやき返してきた。


「では4面全て、買わせて頂きます」

「ありがとうございます。では、ギルドにて契約を」

「はい」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ギルドで契約をした後は、ついでに出しちゃえとばかりに玩具や遊具やらも著作権や標章登録? 字あってるっけ? 色々登録した。

 定番のリバーシ、チェス。

 独楽、竹とんぼ、竹馬、羊皮紙メンコ、おはじき、お手玉、たこ

 滑り台、ブランコ、シーソー。

 スプリングと跳ね板のサスペンション。

 チェーンもブレーキもない原始的な、自転車の原型。

 スケボー、ローラースケート、インラインローラースケート。


 空いた職員総出でここまで登録したら、もう止めてって泣きつかれたので止めた。

 ギルドの在庫金貨が尽きそうな勢いだそうだ。

 仕方ないので、最後に迷子紐だけ登録したら、収納ではなくギルドに入金して貯金しておいた。

 あれ? 預金か?

 金銀銅貨をそれぞれ10枚、ティアが収納して。


「お金がなくなったら、またアイデアを売りに来ますね」


 って言って出てきた。

 職員さん達、マジガクブルしてた。


「アキラさん、楽しそうですね」

「まあな。60年くらい孤独に生きてきたからな、誰かとコミュニケーション取るのは楽しいよ」


「それは良かったです、アキラさんが楽しいと私も嬉しいですから。次は職員の方に聞いてきた建築業者に向かいましょうか」

「おー」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「すみません、ギルドの方にこちらを紹介されたのですが、どなたか居ませんか」

「はーい」


 資材置き場や加工場も込みなのだろうが、かなり大きな建物に入った俺達。

 相変わらずティアが呼びかけてみると、奥から年齢1桁前半に見える美少女がパタパタ走って現れた。

 ギルドの職員もそうだったけど、これでも成人してるんだから、やっぱりドワーフって地球人に見せられないよね。


「はい、お待たせ。ギルドからの紹介だって? 紹介状はあるかい?」

「こちらです、どうぞ」

「はいよ……ふんふん、確かに。こっちに入って来な、今棟梁呼んでくるから」


 奥へと促され応接室に入る。

 今日は応接室に縁のある日だな。

 待つ事数分、ノックに返事をすると、美少年……ドワーフが入って来た。


「ワシがここマーチレスの代表をしている、大工のダイク3世じゃ。よろしゅう」

「ティアナ・ヒノです。こちらは夫のアキラになります。よろしくお願いします」


 こうして、大工との店舗建築の相談が始まった。

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