第14話 どう考えても妻は肉食系

 呼べば必ず来てくれる。

 僕等のヒーロー、ギルドマスター。


「来ない」

「何がですか?」


「いやな、騒動が起きた時のテンプレでは、大体ギルドマスターとかサブマスとかの、上から数えて偉い人物が出てきて、その場を収めるもんだからさ。ただここ、お偉いさんの部屋からは遠そうだからさ、誰も来ないんじゃないかなって」

「なるほど」


 さーて、どーすっかなー……


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 対策を考えてる間に寝てしまったらしい。

 気が付けばどこかの個室のベッドに寝ていて、ティアと同衾どうきんしていた。


「大人の階段を、登ってしまったのか」


 冗談はともかく、あの場は治まったのかね?

 治まったから宿に泊まったのか、治まらなかったからワイバーンを回収して、宿に泊まったんだろう。


 隣で寝ているティアを見て思う。

 こいつは地球の全生命を救ったんだよな。

 まだ宇宙進出の技術が足りないから、地球が滅んだら遠からず、ロケットで宇宙に逃げた少数ですら食糧難で全員餓死しただろうしな。

 それを強いからって、能力が高いからって。

 こんな子供に世界を救って貰わなくちゃならないなんて、俺達地球人は大人失格だよな。


 次に死んだ時も転生するかは分からない。

 だから今、生きている間くらいは……目一杯愛を感じて貰いたい。

 それが俺に出来るたったひとつの感謝の表し方だから。


 つまり!

 こうティアは寝てるけど、ブチューっと行ってもいいんだよね?(愛おしさが爆発して暴走している)

 ティア、愛してるよー。


「うーーー」


 カッ!


 欲望でも漏れたのか、ティアが限界まで目を見開くと、両手を伸ばして俺に巻き付き、熱烈な口付けをしてきた。

 違うのティアちゃん待って。

 まだ口どうしは早いの。

 やっぱり頬や額に軽いキスをするのが、幼児相手には健全だと思うの。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 数分後。

 ツヤッツヤのティアと、赤面を両手で隠す俺が居た。

 確かに一辺ジジイになったけどさ、世界に俺しか居なかったんだから、精神の成長も少なかったんだよ!

 羞恥心なんて感じたのも、ティアと再開してからだよ!

 追加で幼児になってっから、脳がまだ感情制御になれてないんだよ!


「恥ずかしい。もうお婿に……いや俺、とっくに夫だけどさ」

「アキラさんは自由に生きてください。私はそれを支える、肉食大和撫子良妻になりますから」


 肉! 食!

 どんな乙女だよ、まったく。

 早く思春期にならないかなー、たまらんけしからん。


 コンコン。


 ティアに当ててんのよされながら着替えさせられていたら、部屋をノックする音が聞こえてきた。


「大きい方で入ってまーす」

「いやボク? ここ、部屋ですから。トイレじゃないですからね!?」


 ティアが出迎えると、10歳くらいのファンタジー平民服の少女が現れた。


「ヒノさんご夫婦に商業ギルドから、使いの人が来ていますよ」

「そう、ありがとう」

「いえ、仕事ですから」


 そう言って少女は、一礼してから去っていった。

 後にはティアと、迷子紐を背中に繋がれた俺が残った。

 お嬢ちゃん、これはペットの証じゃないんだ、迷子や誘拐を防止するための措置なんだ。

 だからそんな、目を反らして逃げていかないでくれ。

 このまま使者に合うんだろ?

 憂鬱だ……

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