第12話 これが推定60年の修行の成果

「ティア、能力の制限、索敵とかの情報系だけは解除してくれるか」

「はい」


 俺は今胸元が開いたティアの服から顔だけ出している。

 胸の谷間に、おっぱいの上に、俺の顔があるんだ。

 自分でもなにアホな事を、何言ってんだコイツってのは理解出来ている。


 多分何かの魔法なんだろう。

 俺の首から下は別の空間にあって、ティアの服の中にはないんだから。

 DかEランクのおっぱいの上に、ティアしか認識出来ない透明な俺の顔がある。

 うん、わけ分からん。


「ティアのスーパー能力で、近くの町とかに入る料金を調べて、その金額になるまでサーチと転移で小銭拾いをしよう」

「それには及ばないみたいですよ。あちらを見てください」


 首がないから苦労して、ティアの指さした上空を見上げる。


「さっきの愛で私の力が少し漏れてしまったみたいで、それに釣られてやって来たんだと思います」

「へー……ティア、万一の防御を頼む。基本は防御も攻撃も俺がやるから」

「はい。格好いいアキラさんを、私に見せてください」


 ちょ、何自然な感じでハードル上げちゃってんの!?

 まあいいや。

 飛んで来てるワイバーンの耐久力次第だけど、多分一撃で倒せるだろうし。


「ピョロロロロロロー……ギョワー!」


 なんか、ファックスみたいな鳴き声出すんだな。


「ティアには効かないだろうからフンパツして見せてやる。これが今俺に出来る最高の技だ」


【裏返し】


 強き思いを込めて能力を発動する。

 すると、急降下から突撃に移ったワイバーンが、斜め上5メートルの位置で静止している。


「これは、時間停止ですか」

「正解。維持出来る時間は短いから、先に倒しちまうぞ」

「はい」


 ティアのこの、穏やかなはいって返事大好き。


「コンテナハンマー!!」


 壁などのパーツが内外逆になって浮かんでいるコンテナを、遠隔操作でワイバーンの頭部に振り下ろす。

 手応えからして、制限時間いっぱいまで続ける必要もなさそうだ。


【裏返し、解除】


 時間が動き出した瞬間、ワイバーンは叩き落とされる虫のように地面に急落下させられた。


「ガワ」


 次は中身が空の状態のコンテナを召喚? もう呼び方統一して召喚でいいや。

 空のコンテナを召喚。


「パーツ」


 床と天板、そして四方の壁がバラバラになって浮遊する。

 ワイバーンを床に乗せて、壁を使い翼や尾まで積載していく。

 天板を被せたらコンテナを消し……送還して終了。


「なあ、ティア」

「なんです? それと、凄い格好良かったですよ」


「ありがと……戦ってみて思ったんだけどさ。日常使いのちょっと便利な魔法さえあればさ、俺に戦闘用の魔法って不要な気がしてきたよ」


「魔法とコンテナの違う攻撃手段の両刀使いって、格好いいと思いませんか?」


 はい、キマリ!

 俺は、魔法を、極めます!!

 あと、2種類の違う攻撃手段を持つという意味の両刀使いだからな?

 勘違いしたら、めっ!


「じゃあ治安のいい都市を探して」

「見つけましたよ」


「……いい子だ、ティア。門番にはヤナ国だったから捨ててきたって言って、身分証なして入るか。ワイバーン見せたら通してくれるだろ」


「そうですね。転移したので、あそこが目的の都市になります」


 気が付くと俺はおっぱいから解放されていて、自分の足で地面に立っていた。

 かと思ったら、また抱き上げられた。

 右腕で俺を抱えながら、左手は俺の右手と指を絡めて繋いでいる。

 初い奴め。


「愛してるよ、ティア」

「私も愛してます」


 ティアの返事を聞きながら、俺は運ばれるままに身を任せていた。

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