2章

第9話 タイミングを伺っていたら後日日記は発見されました

 ティアに会いたい思いを綴った日記の処分を密かに決めながら、彼女がお湯に流されてからの話しを聞く事にした。


「始まりはアキラさんが、地球から送り出された日から始まりました」


 いきなり俺の記憶とは違う内容なんですが?

 聞いてればその理由もはっきりするだろうなと、口を挟まずにティアの声に耳を傾ける。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 地球では野生動物が、災害を感知して逃走する事があります。

 野生が減った人間にはない能力ですが、なぜその能力が地球にないなんて断言出来るのでしょうか。

 地球はこのまま放置すれば、自分が砕け散る未来を感じとりました。

 それから必死になって、解決の方法を探し続けます。


 しかし地球だけではどうやっても解決しない、そう結論に達しました。

 だから地球は別の世界の力を借りて、この危機を乗り越える事にしました。

 まだ原生生物しか居ない頃から、異世界へと地球上の生物を送り出していたのです。

 そしてこれが、異世界転移の正体だったのです。


 地球は送り出しを増やすたびに情報を蓄積。

 送り出した生物との繋がりを活用して、自分を救う方法を発見したのです。

 そして最後に送り出されたのが、アキラさん、貴方です。


 貴方の使命は私の命を救う事だったんです。


 貴方に救われた私は全て失っていましたが、肉体のポテンシャルだけは、そんじょそこらの創造神を超えています。

 かつて混沌から無限の世界と、神々を創造した存在の残滓ですからね。


 まあ、それは置いておいて。


 あの日水流に飲まれた私は、アキラさんと離れるのが嫌で、己の制御限界を超える魔法を使ってしまいました。

 それは当然暴走して、アキラさんを超えて地球にまで行ってしまいました。

 当時はまだ、この世界よりも地球にアキラさんの生きた証が多かったので、アキラさんの元へは帰れませんでした。


 予想外に到着してみれば、地球にダンジョンが生まれた日でした。

 私は魔法でアキラさんを探しました。

 するとこの世界のアキラさんではなく、地球にいたご両親を感知したのです。

 やはり親子は似るのでしょうね、お2人が揃っていると、非常にアキラさんに近い感じがするのですから。


 アキラさんの家は土地はそのままで、周囲の土地まで購入して新たに建て直したそうです。

 いつかアイツが帰ってきても、家の場所を迷わないようにな、だそうですよ。

 それからはご両親のお家に厄介になりながら、地球とダンジョンの趨勢を見守っていました。


 数十年が経ちご両親も見送ったので、ようやく地球でアキラさんの反応がなくなりました。


「だから真っ先に地球のダンジョンを全て消滅させて、転移で迎えに来たんですよ」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「だから真っ先に地球のダンジョンを全て消滅させて、転移で迎えに来たんですよ」


 とても綺麗な微笑みを浮かべて、ティアはそう言った。


 なんと言うか。

 俺の立ち位置が、ここは俺に任せて先に行け感?

 それもストーリー序盤の、まだ新人の頃の仲間や臨時パーティーの先輩とかがなる役割のアレ。


 確かにそれがあったから、勇者ティア魔王ダンジョンを倒してヒロインちきゅうを救った。救えた。

 それについては正直言って有り難い。

 金で俺を売ったっぽかった両親だが、俺のために家に残っていたみたいだし。

 そんな両親を天寿まで守ってくれたんだからな。


「ティア、両親を守ってくれて、見送ってくれてありがとう」

「はい、どういたしまして。でも、私にとっても2人は夫の両親でしたから、気にしないでください」


「そうか、ありがとう。俺はもう家には帰れないけど」

「帰れますよ、地球にも、日本にも」


(ん? ここ感動のシーンなんだよ? 帰れないけど、この世界で2人で一緒に生きてこうねっていうタイミングなんだよ? 何平然とぶち壊してんの?)


「それに今の私なら、他のオーソドックスな異世界にも転移出来ますから。エルフやドワーフや獣人の女性をアキラさんの魅力で虜にして、巨大ハーレムを作る事も出来ますよ」


「そーお? そんなに勧めるなら行ってみようか、そのオーソドックスな異世界に。俺的には妻はティア1人で十分なんだけどね? ホラどうしてもアキラ様のハーレムの末席にって女の子とか出てくるじゃない? 俺にはこのコンテナがあるんだし、食べさせるには事欠かないからね。気前よく迎え入れちゃおうじゃないのさ」


 あれ?さっきまで、何考えてたんだっけ?

 まっ、いっか。

 思い出せないなら、大した内容じゃなかったんだろう。


 こうして俺は異世界の定番、ハーレム作りを目指す事になった。

 いや、ホント。俺にはティアだけ居れば、もうそれで十分なんだけどね。

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