第6話 すげー・プラチナブロンド

 どれだけ寝たのだろうか。

 かなりの時間を寝たとも思うが、体の芯の疲れが取れていない。

 それでも起き上がり美少女の看病へと向かう。


 昨日? 寝る前と然程さほど変わらない寝姿の美少女だが、鍋の中身は空になっており、スポドリもほぼなくなっている。

 アイドルはトイレに行かないって言うし、この娘も行かないんだろう。

 オマルもオムツもないので、切羽詰まればソワソワするだろうから、その時に自然に外に誘導しようか。


 体調は安定しているが、回復は少ししかしていないようだ。

 肌もまだまだ卵肌には遠いし、髪もボロボロ。

 まだしばらくの間は看護が必要だろう。


「うっ……」


 美少女が眉をひそめて声をもらした。

 床ずれにはまだ早いと思うが……?

 布団の下に、スポーツの代表選手が海外遠征に持っていくマットレスを追加。

 右手が下になるように寝させて、左肩を支えて背中をマッサージ。

 上から順に固まった筋肉をほぐしていく。


「あー、どーすんだこれ……」


 腰までマッサージしてから気付いた。

 大きくはないが非常に魅力的なそのラインは、医療目的とはいえ性少年がマッサージするには、いささか不味い。

 寝ている美少女の左腰をさえて、美尻を揉みしだく中2男子。

 微粒子レベルでセーフくらいで、ほぼアウトじゃね?


「だが、俺はこの尻を揉み解す! 床ずれは収まらない頭痛のように、常に患者をさいなみ続けるからだ。俺はこの美少女が、苦痛に表情を歪めるのを見たくないんだ!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 みんな、楽園エデンはひとつじゃなかったんだよ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 中に人が居る状態でコンテナを消すわけにもいかないので、彼女が回復するまではこの場で待機になるだろう。

 鍋とヤカンだけ満たしておいて、俺は大型バッテリーのソーラーパネルと、コンテナにあった資料本を持って天板に出る。


 ハッチは開けたままにして、中に空気を入れて循環させる。

 設置したソーラーパネルに、大型バッテリーからのコードを接続して放置。

 本には目を通すだけで、疲労のせいか集中出来ずに内容が頭に入ってこない。

 それでも目で文字を追いページを捲っているだけでも、何もしない退屈よりはマシになってるはずだ。


 砂時計で1時間毎に、美少女の様子を見に移動する。

 そんな生活が日本感覚で半月ほど続いた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 美少女は自我が非常に薄く、知識も記憶も持っていなかった。

 名前がないと不便なので彼女にはティアナ・ビーチェノワと名付けた。愛称はティア。

 ゼロから言葉を教えたが、ほんの数日で幼児並みに話し出して、

 今では俺と遜色なく会話している。

 ティアはすくすくと元気に育ちはしなかったが、かなり回復して自分でタラップを登れるまでになった。


 すげー綺麗なプラチナブロンドの髪は艶を取り戻し、常に光沢を放っていて。

 すっぴんなのにどんな映画女優よりも可愛くて美人だ。

 ただちょっと……いや、ほぼ無表情なのがもったいないと思った。


 体は華奢で全身細いのに、心臓の付近とヘソの下の背中側だけは豊かで。つい目線がそっちに吸い込まれてしまいそうになる。

 なお、座高は俺のが高いのに、足の長さはそこまで俺と差がなかった。

 うん、消化の悪い米食って来た種族だから仕方ないよね。

 だって米って、あんなに美味しいんだもの。


 まるで年上の赤ん坊を世話して教え育てていく気分だった。

 トイレを覚えるまでは厚い布で縫った、オムツを当ててたんだから。

 次第に俺の中から欲望が消えていって、慈愛か父性に目覚めた。

 うんでも、パパ呼びは止めてね?

 何の要求も請求もしないから。

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