第5話 回復魔法とかポーション創造能力が欲しい

 コンテナ無敵説の検証は、ドラゴンに攻撃されないと立証出来ないので後回し。

 東に歩きながら街を探し、ゴブリンはコンテナフォールでプレす事にした。


 3日が過ぎ10日が過ぎて、数えるのを止めた。

 初回のあれ以来、ゴブリンすら出てこない。

 でも、ちょっと年上の美少女が行き倒れてたら助けるよね!

 仮に俺が女で、倒れてるのが美少年だったらと考えてもらうと、この気持ちは女性にも理解されるだろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 何故か消して出すたびに内容物が復活するコンテナに、このコンテナ超便利ぃぃぃ! の一言で考えるのを止めてからしばらくの後だった。


 前輪上部のシャフトと前後輪の中間で折れるチャリを担いで、ハッチから出るとコンテナから降りて組み立ててパーツをロック。

 チャリに乗り走り出す。

 既にライフワークになっている東進を、折りたたみ式のオフロード自転車で走行していた。


 武器もファンタジー防具も装着せずに、プロテクターとヘルメットに換装して久しい。

 食う寝る走る以外にやる事もないので、俺の肉体はかーなーり、たくましくなってきた。

 全身を映せる鏡がないのが残念でならない。


 太陽が右手上空へと営業場所をかえたころ、前方に黒い塊を発見した。

 最初は岩石の類かと思い少し逸れるだけでいいかと考えた。

 次に擬態したモンスターだったら? と、考えて急停止した。

 その場で軍用なのか凄い倍率を誇る双眼鏡を、現代式のリュックサックから取り出して覗く。


「んー、左手と足が見える。ならあれは、マント被った行き倒れか、死体のどちらかか」


 囮罠の可能性があるので、双眼鏡を覗いたまま周囲も確認。

 誰もいねえーし、でーじょーぶみてぇだな!


「そんじゃあ、いっちょやってみっか!」


 刀じゃなくて洗濯物に使う物干し竿を運び出して、遠くから推定行き倒れマンをつつく。

 死体蹴りの趣味はないので、物干し竿で強打の予定はない。

 意識を失っているのか寝たフリなのか。

 行き倒れマンに反応がないので、次のステップに進む。


 行き倒れマンの体の下に物干し竿を差し込み、俺との中間地点にコンテナをせり上がり方式で出す。

 なんという事でしょう。

 これまでうつ伏せで不明だった行き倒れマンが、仰向けになったではありませんか。


 行き倒れマンが仰向けになったので、双眼鏡でじっくり観察する。

 フードを被っているので、髪は銀かプラチナブロンドっぽい前髪しか見えない。

 顔はすこぶる美少女で可愛いから美人に変わる途中って感じ。


「罠でもいい! 俺は美少女を助けに走る!」


 一目惚れじゃないけど、こんな美少女との縁は繋いでおきたい。

 それが無理でも看病の間くらいは、朗らかにおしゃべりを楽しみたい。

 物干し竿片手に美少女の真横までダッシュして急停止。

 コンテナせり上がりで美少女を天板に乗せる。


 コンテナに物干し竿を投げ込んで、急いでロープを回収してくる。

 これからの事を考えて、上半身はシャツ1枚になって、脱いだ服はコンテナに投げ込む。

 オッパ……美少女が落下しないように、背中に密着するように背負い、ロープでグルグル巻にすると完成だ!


「ああ、楽園エデンはここにあったんだ……」


 物資の上を通り、美少女をコンテナ奥の角まで運んでダンボールの上に降ろす。

 布団を敷いて改めて布団に寝かせてから、美少女を全裸にする。


 意識はないが呼吸脈拍共にやや遅いか?

 青アザ擦過傷等の負傷は見られない。

 唇が乾いて割れているし、全身の皮膚もカサカサ。

 体温も高い。


 エロ目的じゃねえよ、診察だよ!

 素人診断だけどな。

 1,5リットルの例のスポドリをスポイトで、少しずつ口内へ運んでいく。

 無理せず、時間をかけてゆっくりと。


 合間に、額や内腿うちももに冷却シートを貼っていく。

 体温が上がりすぎると内臓が弱るが、今冷やして代謝が落ちると、水分を吸収する事が出来るのか……?

 医学の知識がないので正解が分からないが、分からないなりにやるしかない。

 それと一応全身のアルコール消毒もして、殺菌しておこう。


 なおコンテナにあった物で悪いが、シャツとトランクスは着せた。

 未使用の服だし大丈夫だと自分に言い訳して、美少女には服を脱がした事を後で謝っておこう。


 何時間経過したかは分からないが、ペットボトル1本分は飲ませた。

 Dクラスオーバーの胸の上下動も緩やかになってきた。

 個人的にはもっと大きいメートル超過の方が好みだが、実際にお付き合いする相手なら、C〜Eくらいが最高のサイズなんじゃないだろうか?

 揉むのに不足せず、着衣のまま見てもよしで。


 いや、そうじゃない。そうじゃなくて呼吸と脈拍だ。

 疲れて思考がピンクに寄って来ている。

 どちらも安定してきたと思う。

 ソーラーバッテリーだと、そろそろ消えるかもと心配なので、ランタンをソーラーから電池式のランタンに変更してセット。


 新たなスポドリをヤカンに移して、コップを側に置いておく。

 鍋にお粥を入れて、不足する栄養補給用に粉末の総合栄養剤を混ぜておく。

 スプーンを鍋に突っ込んだら完成だ。

 これで目美少女が覚めた時、勝手に飲み食いしてくれるだろう。


 懐中電灯で照らしながら、コンテナの反対側の下の通路の角で寝て休む。

 いやはや看病看護って、本気で疲れるんだな。

 自分の全身にアルコールスプレーを吹きかけて撫でつける。

 懐中電灯を切ったら、おやすみー……

 落ちるまでワンセコンドなかったと思う。

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