第2話 ナギ、魔法少女と出会う

「落ち着いた?」

「はい」

「じゃあ話を進めるわね。ナギに行ってもらう世界についてなんだけど、比較的平和な世界だから安全面についてはそれほど心配する必要はないわ」

「とは言っても魔物なんかはいるんじゃ?」

「その点は大丈夫。ナギには私の加護とチートスキルを与えるから」


 そう言ってウインクする女神様は控えめに言ってかわいかった。


「私の加護があれば病気にかからないし、世界にも愛されるからはっきり言ってナギの異世界生活はイージーモード間違いなしよ」


 それはありがたい。


「だからナギはいかに女の子を攻略するか——百合ハーレムをつくることだけに専念してちょうだい」


 これまで恋愛経験がない私にとってはかなりの難題だけどね。


「まあ難しく考えずとも、ナギは自分の思うままに生きてればいいのよ。それが百合ハーレムづくりの最短ルートだと私の勘が告げてるわ」


 うーん。いまいちピンとこない。


「今はわからなくてもいいわ。いずれわかるときがくると思うから。でチートスキルについては……」

「ついては?」

「ひ み つ♡」


 思わずずっこけてしまった。まさかのここで焦らしプレイですか。


「ひとつ言えるのは、ナギは女の子を攻略すればするほど強くなれるということね」


 一体どんなスキルなんだ?


「あ、もうひとつ朗報よ。ナギはもう男に性的な目で見られることは一生ないわ。恋愛対象に見られることも。だから思いっきり女の子とのいちゃらぶを楽しんでちょうだいな」


 女神様が指をパチンと鳴らすと私の足元に魔法陣が浮かぶ。


「最後に。私の名前はリルスよ。あなたには特別に呼び捨てで呼ぶことを許可するわ。ではいってらっしゃい。また会いましょうね、ナギ」


 そうして私は百合好き女神リルスによって異世界ヴェルスへ転移させられたのだった。


 ☆☆☆


「うーん、ここは……」

「目さめた?」


 目を開けると三角帽子を被った女の子が私の顔を覗き込んでいた。


「……だれ?」

「はじめまして! わたしはルイーナって言うんだ。あなたのお名前は?」

「私は一条——いや、ナギよ」


 危ない危ない。異世界で家名持ちは貴族と相場が決まっている。わざわざ面倒ごとを引き寄せるのはごめんだし、日本での私は一度死んだも同然。それに祖父母が亡くなってしまった以上もはや苗字に思い入れはない。よってこの世界ではナギで十分だろう。


「ねえ、ナギちゃんって呼んでもいーい?」

「どうぞお好きに」


 どうでもいいけどこの子コミュ力半端ないな。普通は初対面の人相手にここまでグイグイこれない。


「えへへ。ナギちゃん。ナギちゃん」


 何が嬉しいのか頬に手を当て私の名前を連呼するルイーナさん。


「ところでルイーナさん」

「ルイーナでいいよ。敬語もなしでお願い!」

「わかり——わかった。ひとつ聞きたいんだけど、ここはどこ?」


 パッと見た感じだと今私たちがいるのは教会の中だ。


「ここはね、女神リルス様を祀っている教会だよ」

「やっぱり。じゃあ次の質問。ルイーナはどうしてここに? 私を見つけたのは偶然?」


 さすがにこんな幼い女の子が悪意を持って私に近づいてきたとは考えたくない。でも突如教会に現れた身元不明の怪しい女相手にこんなにフレンドリーなのが気がかりなんだよなぁ。元々の性格なのかもしれないけど。


「ふふふ。よくぞ聞いてくれました!」

「お、おう」

「実はですね、夢の中でリルス様のお告げがあったんですよ! ここにあなたの運命の相手が現れるから案内しなさい…て……」


 初めは変なテンションだったのに、後半になるにつれてルイーナのセリフがだんだん尻すぼみになってきた。


 うん、内容が内容だけにそれを私に直接伝えるのはアウトだね。


 顔を真っ赤にしてうつむくルイーナ。私も心なしか頬がほてってるような気がする。


 それにしてもリルスめ。こんな小さな子まで私のハーレムに加えるつもりか。私としては全然ウェルカムだけどさすがに犯罪だよなー。


「ん?」


 よく見るとこの子めっちゃ巨乳やんけ。ってことは……。


「ねえルイーナ。つかぬことを聞くけどルイーナって歳いくつ?」

「……18だよ」


 異世界で初めて出会ったロリ少女はまさかの年上でした。

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