竜宮の姫神
秋津廣行(あきつひろゆき)
第1章 淡路之狭別(あわじのさわけ)の海
(1)雲野之比古次(くもののひこじ)
第1話 淡路之狭別(あわじのさわけ)の岩窟
「雲が厚くなってきた。波も高くなってきたぞ。雨が降り出す前に島にあがろう。
五隻の
「見えるかぁ~。
「
先頭を走るのは、真っ赤な船旗を翻す
両脇の二艘の船から太鼓の音が、ドン、ドン、ドンと鳴り響き、五隻の船の推進力となった。波間を漂う小さな
副官である
アツミ一族では族長、
「
と、その声で、
浅間の戦いでは、最後まで
高天原を出立する時、
「すでに、小舟と
そう答えたのは、
「そうか、ならば上陸じゃ、わしも行くぞ。」
浅瀬に来ると、若い
「ドボ~ン」
波しぶきが跳ね返り、小船は大きく揺れた。
すると、ほかの三人の若衆も
まずは、
ほかの船からも、次々と小船が出され、上陸の準備がなされると、それぞれに、
先に上陸した
全員が岩場の洞窟に身を寄せると、今度は、
「
「
「さて皆の衆よ、無事に揃っておられるか。」
「みなみな、ともどもに元気で上陸できて何よりである。いよいよ、
雲野之比古次は、上陸したばかりであったが、この緊張した空気の中でこそ、言わねばならぬことがあった。
「浮島も多く、今日、見えた島は、明日には姿を消す島も多いといわれている。島と島の間は狭く、潮の流れは険しい。
「われ、
海風が岩窟の中を走り、「ひゅ~、ひゅ~、ひゅ~」とこだましながら通り抜けていった。まるで、あめつち三神がこの岩窟のなかに、降りてこられたかのようであった。
比古次はその声を聞きながら、心は、天之常立神ヒカネのままであった。
「われは日高の国を離れ、新しき
「
「ところがその年の夏、あめつちが狂った。一度、降り始めた雨は
ヒカネ神は、若き諏訪の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます