第4話 恋愛と将来の両立の難しさ
「正直、恋愛していく上で互いの未来なんて考えない方がいいと思うんだ」
「恋愛の先には結婚だってあるわけだから考えるのが普通じゃないか」
普通は誰だって、将来を考える。それは、1人だろうと2人だろうと関係なく。年を取れば、尚更だ。
僕らの年齢なら、結婚も視野に入れるのは当たり前の事だ。周りじゃどんどん結婚していく。子供がいるヤツだって少なくない。
いつまでも“今”だけの恋愛なんてしていられない。
「それってやっぱり年齢のせいにしちゃってさ、ちゃんと恋愛してない気がするんだよな」
「ちゃんと恋愛って、ドラマじゃないんだし。女受けいい言葉だろ、そんなの」
「俺たちはさ、まだまだ今だけを感じた愛し合い方していいんだと思うんだ」
本当に、ドラマみたいな台詞を言う。
こういう話はできたら、ファミリーレストランじゃなくて居酒屋でしたいものだ。素面で聞くと、恥ずかしくなってくる。
「周りとか未来とか色んな事を気にしすぎなんだよ。昔の俺たちはもっと自由だったはずだ。好きと嫌いで成り立つぐらい単純だったはずだ」
人の意見を否定したくせに、キラキラした感じでよく言う。恋愛は、やっぱり好きと嫌いで成り立つぐらいがいいんじゃないか。
「自由だったけど、お前はずっと片想いを引きずってたんじゃないか」
「だけど、そういう時の方がドキドキ出来てた」
乙女か、お前は。
「でも、そんなんだったら愛し合わなくてもよくなっちゃわないか。今さら片想いばっかでドキドキしてる学生みたいになりたいって事?」
「何を聞いてたんだよ、お前は?」
お前の乙女心、かな? と言いたかったが、彼が真剣な顔をしてたので止めることにしよう。本気で怒られそうだ。
「結局お前はまだ恋愛をしていたくて、彼女はそうじゃなかったって事?」
「そう。何だか妥協したように結婚話をしだしたんだ。俺たちはまだ愛し合い向上しあっていけるっていうのに」
「愛し合う事も、向上しあう事も、結婚してからでも出来ると思うけど」
夫婦という形として。
家族という形として。
互いに愛し合い、向上しあう事なんて容易な事だと思う。
逆に、恋人という形としてでも互いに愛し合い、向上しあう事は難しいとも言える。
結局は、気持ち次第じゃないか。
「言ったろ、彼女は妥協したんだ。そういう関係性を妥協して、ただ寄り添いあうだけの関係性を目指した」
「だから、別れるって決断に?」
ああ、と彼は力強く頷いた。
「本当に俺は彼女を愛してる。だからこそ俺は彼女とこの先を共に歩けない」
強く強く彼女の事を思っていて、そういう結論に至るモノだろうか。
彼が、彼女を愛しているのをよく知っている。ウザったいぐらいその話になった。友人の様に彼女の事を知った。あるいは、恋人の様に彼女の事を知らされた。
「俺はまだ先の事なんて考えられないんだよ。今をただ楽しみたいんだよ」
結局はそんな言葉は、僕らの年齢なら我が儘に聞こえるものだ。
20歳の成人式よりもっとちゃんと、大人になっていかなければならない年齢なんだ。
30歳までには、大人として確立しなければならないんだ。
だけどまだ、宙ぶらりんを楽しみたい。
だから、彼の意見を否定する事はできない。
間違いじゃない。正しくもない。だから、否定も肯定もできない。
「で、君はどうするんだ。最初の話?」
「ああ、やっぱり彼女を愛していると伝えた後に別れを切り出そうと思う」
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