第9話 未来

 今日という日も、後六時間程になった。


 過去の話も、現在の話も暗い話になるならせめて未来の話は明るい話にしたいものだ。


 未来なんて、ちっとも予想できない。


 運命なんて言葉でわかったふりをしてみても、しっかりとした未来予想図があったわけではない。


 今の私の未来予想図なんて、これから食べようと思うカルパッチョと明日の出社時の緊張感ぐらいだ。


 サボってわかったことがもうひとつある。


 明日、出社した時演技をしなければいけない緊張感だ。風邪を引いた演技とはどんなもんだろうか。私の演技力は、いかがなもんだろうか。


 まったく、予想できない。明日の事すら予想できない。


 未来なんてあやふやなもんだ。インターネットで検索できるだろうか?


 私が求める、未来の話。


 車が飛んで走るような遠い未来の事じゃなくて、もっともっと近い未来。


 それでいて、手にはまだ届きそうにない未来の話。


 そう、例えば私の結婚の話とか。


 運命を感じた男との結婚も無かった私に、今後未来あるのだろうか。


 でも、なんだかんだといって結婚は出来そうな気がしてる。よくわからないけど変な自信がある。


 だけど、それは上手くいった恋愛の果てでのゴールではなく、馴れ合いでの到達点。


 きっといくつもの選択肢を選ばなかった結果、選ぶことになってしまう終着点。


 それが私の結婚で、私の未来なのだろう。


 あまり面白くない話だが、そういう点へのたどり着き方に文句も不満も無い。


 きっとそうなんだ、どうせそうなんだ、という諦めでもない。


 そうであればいい、という希望にも似ている不出来な予想。


 計画性の無い、未来予想図。それがいいのだと思う。


 ジャガイモを買いすぎてしまうぐらいの、計画性の無さ。


 確認力の無さ。


 それが私の、本来の私の姿なんだと思う。


 それでいて、しっかりと安全な道を歩けていけるなら儲けモノだ。


 私の未来は薔薇色とは言え無いが、明るいとは言える。


 小声ながらしっかりはっきりと、そう言える。


 未来に向かって運命をひた走るのは、私の方法ではない。


 私には、きっとパラシュート降下で運命という道をジグザグとなぞりながらふんわり終着点を探し続けるのが性に合っているのだ。


 なるほど、今日の話になかなかな終着点を見つけた。良かった良かった。


 何だか、煙草が吸いたくなった。寝室に置きっぱなしだ。

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